福山雅治×石田ゆり子で映画化! 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど…」累計50万部突破、アラフォー男女のラブストーリー『マチネの終わりに』

文芸・カルチャー

2019/10/17

『マチネの終わりに』(平野啓一郎/文春文庫)

 何度も会うことによって深めていく恋もあれば、一度会っただけでどうしようもないところまで落ちている恋もある。芥川賞作家・平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』(文春文庫)は、出会ってすぐに惹かれあった大人の男女の恋の物語だ。

 物語の中で、2人が出会うのは、たった3度。だが、たった3度出会った人が、生涯忘れられない人となる。そんな恋を、あなたは経験したことがあるだろうか?

 累計発行部数50万部以上、至高の恋愛小説として名高いこの小説は、2019年11月、福山雅治石田ゆり子主演で映画公開される作品でもある。

 福山と石田は、切なくも美しいこの物語をどう演じるのか。映画の内容も気になるが、まずは、この作品を、文庫本で一度、開いてみてほしい。すれ違いながらも惹かれていく2人の姿に、あなたも心を動かされるに違いない。こんな恋をしてみたい、こういう風に人を愛してみたいと思わされるに違いないのだ。

 主人公は、世界的な天才クラシックギタリストの蒔野(まきの)聡史。デビュー20周年記念として行われたツアーの最終公演日の終演後、彼は、パリの通信社に勤務している国際ジャーナリストの小峰洋子と出会う。ひと目、洋子を見た時から、心惹かれていた蒔野は、彼女を打ち上げへと誘う。そして、打ち上げで交わされた2人の会話が、彼らの運命を大きく変えることになるのだった。

 はたから見れば、なんでもないような2人の会話。だが、その会話は、40代に差し掛かった2人を強く通じあわせ、惹きつけあうものだった。しかし、洋子にはアメリカ人の婚約者がいた。互いへの愛を断ち切れぬまま、別々の道を歩むことになる2人。彼らの運命が再び交わる日は来るのか。交錯する想い。あらがうことの出来ない運命。東京・パリ・ニューヨークの彩り豊かな街並みを舞台に、音楽家とジャーナリストの男女2人は、情熱と現実の間で揺れ動いていく。

 この物語は、ラブストーリーでありながらも、人生の苦悩、世界の分断や対立といったテーマを織り交ぜ、登場人物たちの心情を緻密に描き出している。蒔野は、天才ギタリストでありながらも、スランプに苦しめられているし、バグダッドで取材していた洋子は、自爆テロに巻き込まれ、目立った外傷はなかったものの、PTSDに悩まされることになる。40代にとって、恋愛は人生のすべてとは言えない。

 だが、恋愛によって、人生が変えられてしまうことは少なくない。愛とは何なのか。人生とは何なのか。人生経験を積み、多様な選択肢をもつ大人たちは、この恋に、どのような決断を下すのだろう。2人は、別々の人生を歩んでいても、様々な場面で、愛する人を思い出しては、自分の人生を見つめ直していく。その姿がなんと美しいことか。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。得られるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか」

 どんな道を通ったとしても、未来を進めば、過去も変わる。2人の男女の恋愛模様と生き様に、魂が震えるような思いがする。あなたも、ぜひこのラブストーリーを体感してみてほしい。大人だからこその恋愛に、その切なさに、強く心揺さぶられるに違いない。

文=アサトーミナミ

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