「自分が自分を愛してやらないでどうするの?」多くの女性を勇気づける人生指南本

暮らし

更新日:2020/1/9

『不良という矜持』(下重暁子/自由国民社)

 佐藤愛子さんや故・樹木希林さんなど、ここ数年、大先輩である女性たちが「人生を語る」本がベストセラー化している。生き方や信条はそれぞれでも、長い人生に裏打ちされた数々の「ブレない」言葉は力強く、同世代だけでなく若い世代も惹きつける。

 作家・下重暁子さんもそうした大先輩のおひとりだ。78歳の時に出版した『家族という病』の70万部超大ヒットに続き、『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』(いずれも幻冬舎新書)も続々とベストセラーに。孤独や老いをむやみに恐れず、といって争うのでも達観するでもなく、力強く対峙して「個」で生きる。そうした下重さんの潔い強靭さに注目が集まっている。

 このほど、そんな下重さんが人生や老いにまつわる悩みに答える新刊『不良という矜持』(自由国民社)が登場した。下重さんにとっての不良とは「枠にはまらぬ自由な人間のこと」であり、矜持とは「自分の中で秘かに芽を出し、水をやり少しずつ育ててきた確固たる信念のようなもの」。まさに「不良老年」として自分の人生を愉しんでいるからこそ、その言葉の力強さはハンパない。同世代を勇気づけるのはもちろんだが、この先の人生に惑いがちな40〜50代のミドル世代の女性たちにもビシビシ響く。

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 たとえば、最初の矜持にあげられているのは「自分に対して汲めども尽きせぬほどの興味を持つ」ことだ。多くの人は「人がどう思うか」を気にして、ものを考えたり決めたりする基準が自分ではなくなってしまうものだが、真っ先に関心を持つべきは他人より自分。

「生涯を共にするたった一人の人が『自分』なのよ。愛してやらないでどうするんです?」

 下重さんの問いに一瞬意表を突かれるが、確かにその通りだろう。「まず自分を愛してやる。好きになってやる。そうすれば必ず自分を知りたいと思うようになる。孤独の時間というのは、自分で自分を愛してやる、自分で自分をわかってやるための、かけがえのない時間」――そんな基本スタンスがブレないから、家族を含む他人との距離の取り方は下重流。他人に依存せず、自分の足で立つことの大事さを問いかける。

 第2の矜持は「世間の枠にはまらない」こと。たとえばアンチエイジングや年齢を気にするのは、「世間並みに」「人と同じように」と考える人が多すぎて、自分で自分を年寄り扱いしてしまうから生まれる悩み。「自分を年寄りだと思ったら、そりゃ年寄り臭くなります」とバッサリ斬る一方で、

「年をとると体は不自由になります。できないことも増えてきます。でも、心の方はそうじゃない。気にすることも少なくなって、自由にのびのびと生きられるはずなんです」。

 その前向きで自由な発想にワクワクする人も多いことだろう。

「飛ぶ覚悟を持つ」「自分だけの秘め事を持つ」「本物をとことん追求する」など、下重さんは全部で6つの「不良老年」の矜持をあげる。年を重ねるからこそ増えてしまう悩みに一つひとつ丁寧に答えながら、本書ではそうした矜持の真意を教えてくれる。

 それにしても、自分は自分をきちんと見つめられているのだろうか? 人に合わせたり人のせいにしたりしたところで、全ては自分に戻る。だからこそ「自分で自分の人生を選ぶ」という強い意志が、人生をより輝かせる――本来、そうした生き方に年齢は関係ない。下重さんの力強い「矜持」は、多くの女性たちの背中をシャキッとさせてくれることだろう。

文=荒井理恵