インフルエンザが大流行するのは個人のモラルのせい? それとも…

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更新日:2020/5/11

 あなたは、ひどい症状で「もしかしてインフルエンザか?」と病院を訪れ、検査を受けたものの陰性だったら安心するだろうか。インフルエンザではないと医師からの言質が取れれば、学校や会社には行くことができるだろう。しかし、本書はこれにも警鐘を鳴らす。検査の陰性結果は、「検査ではインフルエンザウイルスが検出されなかった」ことを示すだけで、「インフルエンザではない」ことを必ずしも意味するものではないらしい。

インフルエンザだけでなく、感染症に罹っていることの証明はできても、その感染症に罹っていないことを証明するのは、かなり困難だ。悪魔の証明といわれる類のものだろう。

 インフルエンザは、初期に熱が出ないことがある。無自覚の患者が社会を駆け回り、大流行が生まれる。このような構図を本書は恐れている。抗インフルエンザ薬のタミフルは、実はインフルエンザウイルスを殺してしまう薬ではない。発熱期間が1〜2日短くなる程度。熱は下がっても、体内にはウイルスが残っている。つまり、この状態で外出すると、他人に感染させるリスクがあるのだ。

 では、風邪やインフルエンザを流行させないために、私たちはどうすればいいのか。本書は、結局、自宅でしっかりと休息することしかない、と言い切る。そのためには、社会の変革が必要だ。つまり、

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・風邪なんかで会社は休めない、休ませない
・インフルエンザだったら休めるけど、医師の診断書が必要
・皆勤賞は尊いものだ

 という考え方を改めること。本書によると、人が一生のうちで風邪をひく回数は、約200回。人生80年とすれば、年2.5回程度だ。ちなみにドイツには、有給病欠という制度があるそうだ。一人ひとりの考え方が変われば、社会が変わるかもしれない。少なくとも、自分の友達や部下が風邪気味であれば、「とりあえず来て」「這ってでも来い」という言葉をなくしていけば、社会から流行を減らしていけるのではないだろうか。

文=ルートつつみ