雪不足は今年だけでは終わらない? 地球温暖化がもたらす日本の冬の深刻な変化

暮らし

2020/2/12

『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題』(川瀬宏明/ベレ出版)

 暖冬の影響で深刻な雪不足が続いている。滑走できないスキー場が後を絶たず、雪関連のイベントも中止が相次ぐ。読者の中には、この冬の雪不足を地球温暖化の影響だと考える人もいるだろう。もし地球温暖化が続けば、今後も雪の降らない寂しい冬を迎えることになるのか。

『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題』(川瀬宏明/ベレ出版)では、そんな疑問を専門家の目線で解説する。著者は気象庁気象研究所応用気象研究部 主任研究官の川瀬宏明さん。

 そもそも地球温暖化とは、温室効果ガスである二酸化炭素が大気中に増加し、地球の平均気温が高くなること。平均気温が高くなるのだから、冬も暖かくなって雪が減るのではないか、と考えたくなるところだ。

 しかし専門家が導き出す答えは、もう少し複雑だ。そのためには気象について理解しなければならない。本書では、雪が降るメカニズムを解き明かし、地球上で起きている大気の流れを説明し、雪を観測するための仕組みを解説している。さらに日本各地における降雪の特徴も述べる。

 その内容は専門的なのに分かりやすく興味深いのだが、詳しくご紹介すると際限がなくなるので割愛したい。だから本書の要点を無理やり導き出すと、地球上の大気は世界中でつながって、連動しながら互いに影響を与え合っていること。そして気候は山脈などの土地の影響を強く受けるので、同じ日本でも地域によって降雪の変化が微妙に違う。

 今から約80年後、もし21世紀末の平均気温が現在より4℃から5℃上昇した場合、ひと冬に降る雪の総量(総降雪量)と雪の深さ(年最深積雪)は減ると予測されている。これは日本全土における傾向だ。ただし北海道の大雪山系だけは雪が増加すると予測されている。

 日本全体で雪は減ってしまうのだが、その減り方は地域によって大きく違う。北日本はそれほど変化がないと予測されているが、もともと雪の少ない西日本平野部や関東の沿岸部(東京や横浜)は、まったく雪が降らない年が訪れる可能性もある。日本の冬の風物詩である雪を一度も目にできないなんて…とても寂しい変化だ。

 全国的に雪が減る予測がされている一方で、北海道や北陸では、災害を引き起こしかねない「ドカ雪」の回数が増えると予測されている。地球温暖化で海水温が上昇して、大気中の水蒸気が増えることが主な原因だ。近年増加する夏季のゲリラ豪雨のように、一部の地域では冬季も危険な気象現象が起きかねない。

 さらに川瀬さんは、もっと深刻な冬の気象変化を取り上げている。なんと冬の訪れの時期がズレこみ、冬の長さが変化するというのだ。スキー場や雪関連のイベントが大打撃を受ける大変な変化である。この詳細はぜひ本書で確かめてほしい。

 最後に本書より、川瀬さんが予想する21世紀末の天気予報をご紹介しよう。

・冬なのに夏日(2100年1月X日)
「今日は全国的に気温が上がり、東京や京都では最高気温が25度を超える夏日となりました。最近は2月上旬でも20度を超えることが珍しくなくなってきましたね。この暑さで、都内で開かれたマラソン大会では、熱中症で救急搬送されるランナーが出ました(後略)」

 私たちが地球温暖化に関心を寄せず、このままいつも通りに暮らし続けると、約80年後にこうなっているかもしれない。

・特に雪が少ない年(2100年2月X日)
「今年は暖冬です。地球温暖化が進み、北陸地方の沿岸部ではほとんど雪が積もらなくなりましたが、今年は標高の高い山でも雪が少なく、ほとんどのスキー場はオープンができない状況です(後略)」

 たとえ約80年後に生きていなくても、予測通りならば30年後でも今より相当暮らしにくい気象環境になっているだろう。地球温暖化は、単純に夏を暑くして、冬を暖かくするだけじゃない。人間の生きる環境を自らの手で過酷に変えてしまう愚かで悲しい変化なのだ。

 本書は「地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題」に答えるだけでなく、私たちの無関心な暮らしぶりに警告を送る。しかし世界各国は自国の経済を優先して、今日も二酸化炭素の排出を抑えようとしない。

 もう少しだけ、地球は人間に住みよい環境を与えてくれるだろう。それがどれだけ続くのか、どれだけありがたいことなのかは、環境が変わったときに思い知らされるはずだ。

文=いのうえゆきひろ