エブリスタで堂々1位の人気作、待望の第2巻! 町に現れた謎めいた美女の正体は…やさしくて切ない現代和風ファンタジー

文芸・カルチャー

2020/3/17

『鵜野森町あやかし奇譚(二) 覚(さとり)之章』(あきみずいつき/PHP研究所)

 人と怪異がひっそりと共存する、とある地方都市・鵜野森町。町の神社の一人息子・朝霧夢路は、猫又の霊獣サクラ、クラスメイトの日野咲、彼らのよき理解者である祖父母と共に健やかな日常を送っている。夢路と咲が足しげく通うジャズ喫茶「アイレン」に、人間ならざる美女が現れる。マスターがかつて愛した女性と瓜二つなのだが、彼女はすでに亡くなっているはずで…。

 小説投稿サイト・エブリスタの「現代ファンタジー×切ない」部門で堂々1位に輝き、書籍化されたあきみずいつきさんの『鵜野森町(うのもりちょう)あやかし奇譚 猫又之章』(PHP研究所)。その第2巻『鵜野森町あやかし奇譚(二) 覚(さとり)之章』(PHP研究所)が大好評発売中だ。

 前作で、心に深い傷を持つ咲が引き起こしてしまった怪奇事件を一緒に乗り越え、自らも心の強さを取り戻した夢路。止まっていた時間がゆっくりと動きだした矢先に、またもや不思議なトラブルに巻き込まれる。

 幽霊とも妖(あやかし)ともつかない、正体不明の美しい女性・伶花。

「アイレン」のマスター・圭一が若き日に愛しあった恋人そっくりの姿かたちをしているが、伶花本人にも自分が何者なのか分からずにいる。ただひとつたしかなのは、人間ではないということだけ。

 夢路と咲は、亡くなった伶花が幽霊となって圭一の前に戻ってきたのだと推測する。けれどサクラはそれを否定。伶花の不安定な霊気をケアしつつ、彼女が自分を取り戻す手助けをすることに。

 シリーズ第2弾とあって、夢路と咲、サクラの3人(2人プラス1匹?)のチームワークはいよいよ絶好調。サクラは黒猫の基本形態と、和装の麗人の人間形態とを自在に使い分け、猫缶に目がない腹ペコキャラぶりも健在だ。そんなサクラに振りまわされながらも、困っている人や妖がいたら助けることを迷わない、心やさしい夢路。そしてなにより、咲の変化が実に微笑ましい。

 第1巻の彼女は、他人に心を許さず、誰かとつながることを諦めて生きていた。過去のつらい経験によって未来への希望が持てなくなり、感情を封じ込め、常に無表情だった。だが今巻の彼女はもう、そうではない。

 夢路の祖父母と積極的に交流し、圭一とのジャズ談義に花を咲かせ、サクラと伶花と夜の女子会を楽しむ。表情がやわらかくなって、感情を出すようになり、特に夢路に対して遠慮がなくなってきたのが、なんともかわいらしいのだ。

 夢路以上に咲は、伶花が妖ではなくて幽霊であってほしいと望む。圭一と悲しい別れをせざるを得なかった彼女が、死してのち長い時間をかけて彼のもとへ還ってきたのだと信じたくて。そうでなければ2人がかわいそうだから。

 しかし、彼らが突きとめる伶花の正体とその目的は、想像を超えてヘヴィなものだった…。

 胸が締めつけられるような圭一と伶花の大人の恋と、今まさにはじまったばかりの夢路と咲の初々しい恋。2つの恋愛模様の対比が心にくく、最後には切なくも多幸感にあふれたエンディングが待っている。

 他者との共存や関係性を著者ならではのあたたかいまなざしで問いかける、現代和風ファンタジーの秀作だ。

文=皆川ちか

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