小学校低学年から70歳の大人まで夢中に!「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズの魅力は何?

文芸・カルチャー

更新日:2020/5/7

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(廣嶋玲子:著、jyajya :イラスト/偕成社)

 シリーズ累計115万部を突破し、あまりの人気に図書館では借りられないところも続出しているという「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズ(廣嶋玲子:著、jyajya:イラスト/偕成社)。担当編集者いわく「本を買った親御さんや、おじいちゃんおばあちゃんからも『おもしろかった』という声を多数いただいています」とのことだが、本当におもしろい小説は読者を選ばないもの。なんでも願いを叶えてくれる不思議なお菓子を売ってくれる銭天堂という、物語の舞台となる店に、老若男女問わずお客が訪れるところも、ターゲット層を広げている理由だろう。

 そして、駄菓子を買ったお客が、どういう運命をたどるのか、まったくもって読めないところに引き込まれる。謙虚に幸運をつかむ人もいれば、欲をかいて破滅する人もいる。お客の抱く欲望や願いによってまるで様相の変わるストーリーが、他人の人生をのぞき見しているようで、そして自分と通じるところも見えて、ついつい夢中になってしまうのだ。

わたしは、3かんを読んで、おばあちゃんに「しわとりうめぼし」をあげたいと思いました。銭天堂の、不幸になるか、幸福になるかは自分しだいっていうのがおもしろくてどんどんくせになって、はまっていきました。(読者の方より)

私にとって銭天堂は、友だちのようなもの。銭天堂が出版されていなかったら今の私はいないはずです(12歳)

いろいろなおかしがあって、でも使い方をまちがえると大変な目にあって、とてもおもしろいです。特に2巻の「おもてなしティー」はさいこうです。わたしもつかってみたいので、小ぜにをためようと思います。りゆうは、そうすればべに子さんがあらわれるからです。(10歳)

うちのがっこうではとしょしつでうばいあいのようにそのばしょめがけていくので大人気です。わたしがよかったおかしはドリームドームです。ゆめのせかいにいけるのはとってもたのしそうだったけど、つかったらしっかりルールをまもろうと思いました。アニメ化してほしいです!(9歳)

 という、純粋におもしろがる子どもたちの意見もあれば、大人たちに痛切に伝わっているものもある。

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姪の子供から借りて読み始めたらおもしろくって、もうすぐ70歳の私もすっかりはまってしまいました。我が孫たちに読ませようとさっそく全巻購入しました。春に他県から越してくる孫たちと共通の話題で盛り上がりそうです。ババ仲間にも口コミしています。ちなみに紅子さんは渡辺直美さんをイメージしてしまいます(60代)

小学校で教師をしておりまして、子どもたちにもすすめています。人間の心の奥の奥をのぞきこむような気がして、ぞっとするような、ドキッとするような思いで読ませてもらっています。「自分の中にもあるなあ…」と。今後も楽しみにしております。(40代)

 理不尽な現実に耐え続けることにかけては、大人たちも負けていない。何十年生きても、欲望や感情をコントロールできない自分のふがいなさだって身に沁みている。シンプルな物語に見えて、行間にさまざまなメッセージが潜んでいる物語。あなたには、どの駄菓子エピソードが響くだろうか?

文=立花もも

(※)コメントは「偕成社 愛読者はがき」より引用