「ジェンダー・ギャップ指数」過去最低121位の日本で、女性リーダーが活躍するには

社会

2020/5/25

『女性リーダーが生まれるとき 「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成(光文社新書)』(野村浩子/光文社)

 なかなか出口が見えないコロナ禍だが、最近は「アフター・コロナ」の世界についてのニュースが増えてきた。来るべき社会で私たちが意識していかなければいけない課題とは何か。環境や格差、民主主義への目線などさまざまにあげられるが、中でも日本が世界で圧倒的に遅れている分野に「ジェンダー・ギャップ(男女格差)」がある。

 実は2019年末、世界経済フォーラム(WEF)が恒例で発表する「ジェンダー・ギャップ指数」(経済、教育、保健、政治分野における男女平等の度合いを指数化したもの)において、日本は153カ国中、過去最低の121位。世界的にも「最低」ランクに位置しているという現実をご存じだろうか?

 この下位低迷の大きな要因と考えられるのは、女性リーダーの少なさだといわれている。このコロナ禍でドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダーン首相らの女性のリーダーシップに注目が集まったように、現在世界のあちこちで多くの女性リーダーが活躍している。もちろん日本にも小池都知事など複数の女性リーダーがいるが、それでも世界水準に比すればまだまだということだ。ちなみに日本政府は2003年から「202030」(あらゆる分野でリーダーとなる女性を2020年に30%にしようという目標)を掲げていたというから、かなり残念な結果であることも認識しておきたい。

 では一体、日本社会で女性リーダーが活躍するためにはどうしたらいいのだろう? そうした問いを考える上で、『女性リーダーが生まれるとき 「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成(光文社新書)』(野村浩子/光文社)はリアルなヒントを与えてくれる1冊だ。著者の野村さんは『日経WOMAN』編集長や日経新聞社・編集委員などを務めたジャーナリスト。本書は野村証券、JR東日本、本田技研工業、キリンビール、日本航空、楽天ほかいわゆる大手企業の女性リーダーたちを丁寧に取材し、彼女たちのキャリアの転機(本書では「一皮むけた経験」と呼ぶ)を振り返ることで、女性リーダーを生み出すために必要なことを組織の視点と個人の視点双方から検証していくというものだ。

 いわゆる均等法世代として役員まで上り詰めた人、中途入社からチャンスをつかんだ人、その道のりはさまざまだが、いずれも試行錯誤しながら積み重ねた成功体験(もちろん挫折もある)が「一皮むけた経験」となり、企業人としてより広い視野を獲得し、それが役員への道につながっていったことがよくわかる。手がけてきた仕事のスケールも大きければ責任も大きく、その道筋は一般の男性社員となんら変わらないものだ。

 中には「こんな仕事も(女性に)任せたんだ!」と驚く読者がいるかもしれない。注意したいのは、そうした感覚こそが「ジェンダー・ギャップ」を深めるということ。実際に彼女たちも「下駄を履かせてもらったのだろう」「女だからすぐにやめるだろう」と邪推する周囲の目線と絶えず闘ってきたという。だが理解のある上司や柔軟な組織、家族の協力に支えられ、何より「仕事がおもしろい」「もっとこうしたい」という自らの熱意が仕事の原動力となり、多くの部下に信頼されるリーダーとなったのだ。

 とはいえ「役員なんてエリートだし、私には関係ない」と思う女性もいることだろう。実は女性役員が増えるということは「無理なく仕事と家庭を両立して働き続けることができ、性別・年齢関係なく実力ある人が昇進して管理職に就ける」という結果の表れであり、最終的には働くすべての女性の環境整備につながっていくことでもある。「女性役員のキャリア形成は雲の上の話ではなく、あまねくすべての女性に関係する」と著者。一人ひとりの女性が意識を変えることもまた「社会を変える力」につながっていくのだ。

 なお本書ではクオータ制(議員や会社役員などの女性割合をあらかじめ決めて割り当てる制度)を導入したドイツの実態や、実力主義が基本のアメリカのシリコンバレーでも根強いジェンダー・バイアスなど海外の事情にも焦点をあてる。日本社会に必要とされることを広い視野で考えさせる本書は、女性の活躍推進に悩む方はもちろん、多くの女性たちが自らの生き方を考える上でも励みになるに違いない。

文=荒井理恵

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