人気恋愛マンガ家・柴門ふみが、後輩女子に伝授する「オトナのたしなみ」

文芸・カルチャー

更新日:2020/6/17

『オトナのたしなみ(角川文庫)』(柴門ふみ/KADOKAWA)

 フジテレビの運営する動画配信サービスFODで、29年ぶりにリメイクされた「東京ラブストーリー」が配信中だ。

 29年前に織田裕二が演じた主人公の“カンチ”こと永尾完治を伊藤健太郎が、鈴木保奈美が演じたヒロインの赤名リカを石橋静河が演じている(余談だが、俳優・石橋凌と女優・原田美枝子の娘である石橋静河は、2017年公開の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で多くの新人賞を受賞するなど、近年要注目の女優である)。

 原作の同名マンガの作者は、言わずと知れた恋愛マンガの旗手・柴門ふみ

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 同じくテレビドラマ化された『同・級・生』や『あすなろ白書』など手がけた作品をあげれば枚挙に遑がないが、実はマンガだけではなく、これまでに多数のエッセイ集も出版している。今回紹介するエッセイ集『オトナのたしなみ(角川文庫)』(KADOKAWA)は、2017年に出版され好評を博した単行本が文庫化された一冊だ。

 本書では、小学生の頃に漠然と「三十歳以上がオバサン、六十歳以上がオバアサン」だと考えていたという著者が、“デパートの三階までのフロアで服を買えば、「オバサン」で、四階以上だと「オバアサン」に近づくのでは?”など、独自の視点で「オトナとは何か」の定義に切り込んでいく。

 最終的には、四十五歳ぐらいで「まあそこそこオトナになれたかな?」と思えたという著者がオトナとしてちゃんと四十〜五十代を過ごしてもらうためのヒント集として読んでほしいと語る本書だが、「まだまだオトナにならなくてもいいや」という若い読者や、「自分はもう十分にオトナだ」という年配の読者にも、今回の文庫化を機にぜひ手に取ってみることをお勧めしたい。

 本物の「オトナ」になるための知恵は、若いうちに知っておくに越したことはないし、柴門ふみと同世代の女子も「わかる」「あるある」と膝を打って楽しめること請け合いだ。

“本物の「オトナ」になりたい女子に贈る痛快指南書エッセイ”と謳われてはいるが、そんな“「オトナ」になりたい女性たち”と日常的に関わる男性にも、実は必読の一冊だ。

 というのも、還暦を迎えた著者が、年をとること、離婚、セックスレス、ママ友や悪口との付き合い方、恋愛などについて自身や周囲の体験談を交えて赤裸々に語るこのエッセイ集は、「自分は対象ではないから」と逃してしまうにはあまりにも惜しい、女性たちの心の機微が詰まっているからだ。

 複雑な女心を学ぶにはもってこいの一冊なのである。

文=古川ケイ