赤川次郎のデビュー作! 手持ちぶさたな時に最高の1冊

小説・エッセイ

2012/6/21

幽霊列車

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:赤川次郎 価格:486円

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いまテレビで赤川次郎の「三毛猫ホームズ」をまたドラマにしてるけど、僕ら若い時の「三毛猫ホームズ」はたしか石立鉄男でしたね。女優さん誰だったかしら。猫のホームズもいまは、トトロみたいなものに変身しててなんとなくおもしろいです。

「幽霊列車」はその赤川次郎のデビュー作。

気立てはいいけどちょっとボヤッとしている独身の中年刑事と、切れるけれどどこか謎めいたところのある女子大生がコンビになって事件を解決する連作短編。

これやっぱり僕ら若いころ「土曜ワイド劇場」でやってた時、刑事は田中邦衛さん、女子大生は浅茅陽子でした、たしか。ヘバちゃん、といってももう誰も知らない。

このふたりはコンビといっても変則で、常にいっしょに行動してるわけじゃないんです。刑事が行くと行くとこ、なぜか幻みたいにふいっと現れて、巻き起こる事件を解決してはいなくなっちゃう。だからかすかな思慕を抱きつつも、連絡先すら分からないという展開。なかなかうまく読み手を引っぱります。

表題作「幽霊列車」は、山間の温泉地に走る列車から、たった1駅の間に8人の乗客が煙のように消え失せる。人間消失の謎ですな。謎もたしかに魅力的だけど、物語の運びがデビュー作としちゃありえないくらい巧妙で、ついつい読まされるという感じ。ほかの赤川の小説とおんなじで、1冊があっという間です。

だいたい赤川次郎って、「軽い」とよくいわれるけれど、「おもしろすぎない」のが真骨頂でしょうね。おもしろすぎると夢中になるから、まわりのことを全部忘れちゃう。宿題忘れるし、ご飯忘れるし、息するの忘れる。それは強烈な体験かも知れぬが、人間小説まみれで生きてるわけじゃない。読書で命まで縮めたくない。そういう人のために、熱中しすぎないように、読みながら目の端に少しまわりの世界が見えるようにしてある。安心して、おもしろさに浸れるっつう寸法であります。

手持ちぶさたな時に最高の1冊。


関係者の障礙から滑り出すことで生まれるスピード感はさすが