これぞ下町、これぞホームドラマ! 四世代家族の暖かでファンキーな毎日

小説・エッセイ

更新日:2012/6/21

東京バンドワゴン

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:小路幸也 価格:432円

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懐かしき昭和のホームドラマを覚えているだろうか。
たとえば『寺内貫太郎一家』。あるいは『ムー』。向田邦子さんが亡くなり、久世光彦さんが亡くなって、時代も昭和から平成に変わって、もうあんなドラマは見られないのかな…と思ってる四十代以上の皆さん。大丈夫、まさにあの味わいのシリーズがあるから。それが『東京バンドワゴン』だ。

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舞台は堀田家四世代が同居する下町の古本屋兼カフェ「東京バンドワゴン」。この一家や店に舞い込む謎を家族でわいわい解いていく連作短編集だ。「春 百科事典はなぜ消える」は古本屋の店頭で起きた事件を、「夏 お嫁さんはなぜ泣くの」では猫の首輪に結びつけられていた文庫のページの謎を、「秋 犬とネズミとブローチと」では本を持って老人ホームを疾走したおばあちゃんを探し、「冬 愛こそすべて」では先代の書き付けの謎を解く。

昭和のホームドラマを彷彿とさせるのは、まずは家族全員での賑やかな食事シーン。六十歳にして不良ロッカーの我南人(がなと)、やたらとモテて女性問題を起こしてばかりの孫の青、既に亡くなったおばあちゃんの幽霊が語り手をつとめるってのも含めて、キャラがみんな楽しい。ストーリーはややベタなところもあるけれど、その予定調和も含めてこれは昭和のホームドラマなのだ。しかも『白い巨塔』じゃなくて『寺内貫太郎一家』なんだから。

そして根っからの悪人がいないというのも読んでいて気持ちのいい理由。みんないつも明るくて笑ってて、でも実はけっこうシビアな事情もあるんだけど、それでも「たいしたことないよー」と笑いで包む。気持ちがギスギスしてるときに本書を読めば、「まあ、なんとかなるさ、楽しくいこう!」という気分になれる。そんな本。

ただこれだけの人数の家族を、たった四編の短編で味わい尽くすのはムリというもの。正直これだけでは物足りなく感じる人も多いだろう。ということで、このシリーズは番外編も含めて現在6作目まで出ている。そして7作目も今月末に発売予定(電子書籍になっているのは4作目まで)。ゴールデンウィークにシリーズ一気読みはいかが?


登場人物はめちゃくちゃ多いけど、最初に一覧があるので大丈夫

人物相関図もついてる…けど、ちっちゃ! 画像データらしくiPadでは拡大できませんでした。iPod Touchの画面で見ても、この縮尺のまま。字、見えなかった(笑) ここは再考をお願いしたい(他のデバイスでは大きく見えるのかもしれません)

この古本屋の家訓がステキなので、思わずマーカーひいちゃった
※画面写真は電子文庫パブリのものです