殺処分寸前の問題犬がかわいい家庭犬へ! 咬む・吠える・暴れる…問題犬との奮闘記『どんな咬み犬でもしあわせになれる』

暮らし

公開日:2021/2/11

どんな咬み犬でもしあわせになれる 愛と涙の“ワル犬”再生物語
『どんな咬み犬でもしあわせになれる 愛と涙の“ワル犬”再生物語』(北村紋義/KADOKAWA)

「殺処分ゼロ」を達成したとする自治体が増えている。ところが人の手に負えない犬はその対象外とされることが多い。『どんな咬み犬でもしあわせになれる 愛と涙の“ワル犬”再生物語』(北村紋義/KADOKAWA)には、さまざまな問題行動を抱える犬が心を開き、新たな犬生を歩むストーリーが綴られている。

 著者の北村紋義さんことポチパパは、47歳で初めて犬を迎えてから殺処分の現実を知り、問題犬を専門とする動物保護活動を始めた。YouTubeに開設した「保護犬達の楽園」チャンネルで配信している犬との付き合い方が評判を呼び、チャンネル登録者数は19.4万人(2021年2月現在)と20万人に迫る勢いだ。これから犬を迎える人や犬のしつけに悩んでいる人は、本書を参考にしてみてはいかがだろうか。

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不幸な過去が原因で咬む犬になってしまう

 北村さんは保健所で秋田犬を譲渡してもらったことをきっかけに、咬む・吠える・暴れるという三拍子がそろった犬に次々と出会うことになる。そのなかで問題犬の多くが過去に虐待されていたことを知り、「不幸な過去が原因ではないか」と思い至る。挫折を繰り返してきた自分の過去を重ねて、犬にも新たな犬生を歩んでほしいと願うようになった。

不幸な過去が原因で咬む犬になってしまう

 とはいえ、問題行動を改善するのは簡単ではない。北村さんが「猛犬どころか猛獣も通り越した怪獣」と呼ぶのが命(あきら)だ。保健所に収容されていたが、人が近寄れないため殺処分すらできない状態だったという。交渉の末、引き取ることができたが、問題行動の宝庫。しかし何十回も咬まれながら2年がかりで改善。今では一緒に寝ている仲だという。

人が近寄れないため殺処分すらできない状態だった命(あきら)

小型犬も人の接し方次第で問題犬に

「咬み犬」と聞くと凶暴な大型犬をイメージするかもしれないが、人気犬種の小型犬にも少なくない。犬に恐怖を与える体罰や接し方が問題行動のきっかけになることがあり、トイ・プードルでも咬み犬に変わってしまうのだ。北村さんは力や恐怖による服従訓練は行わず、犬と向き合って直していく。

小型犬も人の接し方次第で問題犬に

 問題行動が改善したトイ・プードルは新たな飼い主に譲渡され、かわいい家庭犬となって幸せに暮らしている。動物保護団体では、保護犬の譲渡の際にトライアル(家族と犬の相性を確認する)期間を設けているが、北村さんは無期限。譲渡後にも相談を受け付けているのが特長だ。

ライフスタイルに合った犬を選ぼう

 犬を迎えるとき、犬の容姿やサイズを見て選ぶ人が多いのではないだろうか。北村さんがすすめるのは、飼い主の性格や趣味、ライフスタイルをもとに考えること。猟犬や牧羊犬などのルーツによって性格が異なるため、犬種に対する知識を深めることも重要だという。

ライフスタイルに合った犬を選ぼう

 本書では飼い主のタイプ別おすすめ犬種リストを掲載している。これから犬を飼おうと思っている人は必見だ。信頼関係と主従関係の大切さも解説されているので、すでに犬を迎えている人も、暮らし方のアドバイスとしてぜひ参考にしてほしい。

文=金子志緒

【著者プロフィール】
北村紋義
ドッグメンタリスト(問題行動犬専門家)、ドッグスクールポチパパ代表。2012年から犬の愛護活動を始め、とくに難しい凶暴犬、問題行動犬、大型犬、野犬などの保護活動を始める。犬の心理学、行動学を学び、数多くの噛み犬の矯正訓練、犬の問題行動改善トレーニングを経て、犬の問題行動専門改善ドッグトレーナーとして活動中。力や恐怖による服従訓練などは一切行わず、おやつなどのごほうびも使用せず、正面から問題を持つ犬と向き合い、「リハビリトレーニング」という方法で、犬の問題行動を改善している。