怖すぎて泣きます、眠れません。でも読むのをやめられない三面記事小説

小説・エッセイ

2012/7/31

三面記事小説

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:角田光代 価格:443円

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下世話な話って、みんな好きですよね。わたしも大好きです。三面記事に載る事件というのはだいたい、そんな下世話な人間関係のにおいがぷんぷんしています。ですが気をつけてください、気軽にうっかり読むにはこの小説、迫力がありすぎます。

『森に眠る魚』『八日目の蝉』『紙の月』など、角田さんの作品には実際に起きた事件をモチーフにした長編小説がいくつかありますが、こちらはずいぶんまえに出版された短編集。
「二十六年前に同僚を殺して庭に埋めた男が自首」「不倫相手の妻殺害を闇サイトに依頼した女の逮捕」「女子中学生二人が教師の食事に異物混入」などの事件がモチーフとなっています。

もちろんね、創作なんですよ。全部、お話。小説です。だけどたとえば、既婚者と知らずに付き合いを始めてしまった男に、どんどんのめりこんでいく女の姿を描いた「ゆうべの花火」。
最初は向こうが、自分をより好きなはずだった。だけど既婚者とわかったときには心は奪われていて、いつしか立場は逆転し、彼女はお金を払ってまで彼に会い続け、都合のいい女以下の扱いをされても彼に執着し続ける。はたから見れば、馬鹿な女です。でもその彼女の、「どうして?」という想い、心の均衡が狂っていく過程はたぶん、女性なら誰しも理解できるものじゃないかと思うのです(目を背けたくなったり、嫌悪したりするとしても)。

それから、仲が良かったはずなのにいつしか距離のできていた姉妹を描いた「赤い筆箱」。
人づきあいが苦手で内向的な姉と、無邪気で人に好かれ青春を謳歌する妹。姉妹という距離だからこそ、女同士だからこそ生まれる不協和音。私にも妹がおりますが、性格構造が似ているためにこのお話がいちばん恐怖でした。大好きで、でも妬ましくて、無視もできないから憎らしくてたまらない。そんな感情を抱いたことのある人は少なくないと思うのです。

そう、この短編集が怖いのは、「感情の闇をどれも理解できてしまう」こと。見ないふりをしていたり、そうはなりたくないと思ったり、そんなふうに遠ざけている部分をつきつけられるようで、おそろしい。他人事じゃない怖さが、あるのです。なのでこれを読んだあと、妙に妹に優しくしてみたりしました。わたしはちがう、この小説の人達とはちがう、そんなふうに言い聞かせて。


創作だとわかっていても、隣で起きた事件のような臨場感

各章の頭にはこんなふうに、三面小説記事が掲載。結末はわかっているはずなのに…なおさらこわい

きっと誰もが思う「こんなはずじゃなかった」という気持ち

卑屈になりたくないのに、身近な人との比較でどんどん自分を貶めていく……