自分を“女”と認められない「自分嫌い」な26歳が合コンで出会ったのは…『やわ男とカタ子』が笑って泣ける

マンガ

公開日:2021/9/19

※この記事は最新巻の内容を含みます。ご了承の上お読みください。

やわ男とカタ子
『やわ男とカタ子』(長田亜弓/祥伝社)

 洋服を買うときに、着たい服よりも無難な服を選んでしまう。本当はあの有名人と同じ髪型にしたいのに「似合わない」と言われるのが怖くてチャレンジできない……など、容姿に関する悩みは尽きません。自分の容姿に自信が持てないまま自らに“呪い”をかけていた、なんて人もいるのではないでしょうか。そうなると「人は見た目じゃない」なんて言葉は、ただのきれい事に聞こえます。『やわ男とカタ子』(長田亜弓/祥伝社)は、そんな悩み多き人におすすめの作品です。

 主人公の藤子は、自身の容姿にコンプレックスを抱える26歳。彼女は誕生日になると「年齢=彼氏なし歴」でネット検索して仲間を探したり、親友・久美と自分を比べて落ち込んだりと、悶々とした日々を過ごす、ネットスラングで言う“喪女”でした。

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 この“喪女”という言葉について、同作の作中では以下のように定義しています。

「【喪女】[読み方]もじょ・もおんな
交際経験のない・モテない女を指す。併用されるキーワードは
・ぼっち
・自虐
・卑屈などネガティブなものが多い」

 読者としては、藤子がマイナス思考に囚われるたび「そこまで卑屈にならんでも……」と悲しくなってしまいますが、そんな彼女が合コンで出会ったのが、バイセクシュアルの弁護士・小柳さん。合コンの最中、モテない自分をネタに自虐に走る藤子を見た彼は、藤子を2軒目に誘い「卑屈なかまってちゃん」と叱責。自分が目をそむけていた部分に塩を塗り込まれた藤子は涙を流してしまうのでした。

 彼女の泣き顔を見た小柳さんは「あんたを泣かせた責任とったげる。喪女脱却よ、藤子!」と提案し、藤子の脱喪計画がスタート。第一印象は涙の味になりましたが、彼女は自分を変えるチャンスを掴んだのです。その後、小柳さんはすぐ卑屈になる藤子に対して、度々叱咤激励を送ります。そんな頼れるやわ男、小柳さんの名言の一部がこちら。

「女であることに条件を作って、その上自分にもルールを課してその中でがんじがらめになっちゃってる。あんたを身動き取れなくさせてるのは、あんた自身なのよ」
「はっきり言うけど、(藤子が愛されない)一番の原因はあんたのその卑屈さ! まわりを凍りつかせる自虐っぷり! 励ましても『どーせあたしなんか』って言い張る意固地さ! こんな女超絶美人でも愛されません!」

 ここまで言われたら、清々しさすら感じますね。厳しい言葉を送りながらも、彼は藤子にかわいい洋服を見立ててくれたり、一緒にクラブで踊ってくれたりと、彼女がこれまで見たことがない景色をたくさん見せてくれるのでした。

 いくらなんでも、面倒見が良すぎますよね。じつは、彼のおせっかいのウラには“自分の黒歴史”が関係しているとか。

「自分を嫌いながら生きるって大変よね」
「…小柳さんもそうだった?」
「まーね、あんたは昔のあたしに似てる。自分の性に違和感と嫌悪感しかなかった頃のね。…ま、言っちゃえば自分の黒歴史を水に流すために、あんたの更生を利用してるようなもんだから」

 小柳さんにとって、藤子の脱喪計画は過去の自分と決別するための計画でもあったのです。その後、彼の愛あるスパルタ教育によって、藤子は少しずつ前に進んでいきます。

 ここで、同作を読んでいない方には衝撃のネタバレになってしまいますが、藤子と小柳さんは第4巻で交際をスタートさせます。一体なにがどうなってそうなったのか、気になりますよね……! その全容は、ぜひ本編を読んで確認してください。

 そして、7月に発売された第6巻では、藤子の前に小柳の元カレ・モモが現れ、さらに混沌とした状況に……。やわ男とカタ子の恋から目が離せません!

 恋のために変わることの楽しさを教えてくれる同作。新たな自分に出会う勇気をくれる作品です。

文=とみたまゆり

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