「我思う、ゆえに百合あり だが そこに我、必要なし・・・」

小説・エッセイ

2012/10/8

百合男子 〈第1巻〉 我思う、ゆえに百合あり。

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 一迅社
ジャンル:コミック 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:倉田嘘 価格:648円

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つくづく、男などいらないと思う。この世界には可愛い女の子たちがこんなにたくさんいるわけであるし、彼女たちは彼女たちだけでキャッキャウフフと楽しそうである。それで十分じゃないか。

第一、女の子たちの間に、男が入るとろくなことが起こらない。惚れた腫れたでドロドロの少女漫画みたいな展開ばかりになってしまい、ろくなことが起こらない。そしてそういう時の男は大抵まぬけな顔をしている。必死なのは女の子たちばかりで、男は何も考えていやしない。

僕は黙って女の子たちがイチャイチャしているのをずっと見ていたいのだ。それだけで幸せになれる。頭の中に幸せを感じるホルモンがいっぱい吹き出して楽しくなるのだ。女の子がイチャラブしているものを百合と名指すのであれば、百合は至高である。美しい、素晴らしい、ハッピーハッピー。

しかし、ここで問題があることに気づく。百合を至高とするのであれば、自分なんていらないじゃないか。

あれ? 自分がいらないのであるとするなら、僕はこの世から消えるしかない? 待てよ、それでは百合世界を堪能することはできないじゃないか。しかし、百合世界を完璧にするには僕という存在は限りなく邪魔じゃないか。大変だ。これは一体どうすればいいんだああああああ!

以上の途方も無い難題に挑んだのが倉田嘘の『百合男子』である。その名の通り、百合を愛してやまない主人公の花寺啓介の抱える葛藤と、その行動の顛末を描いた作品だ。

毎号欠かさず『百合姫』をチェックし、細かく作品批評までしてしまう彼は、その想いが強すぎるあまり、現実でも自らの百合妄想を炸裂させてしまう。同じクラスの藤ヶ谷沙織と宮鳥茜の関係について探るため、ストーカーのように追跡したり、女の子の何気ない仕草をきっかけにその場で妄想のSS(ショートショート)を作成したり、女装した男子が許せずに服をビリビリに破いたり…

しかし、彼はふと自分の姿を鏡で見て、我に返る。
「百合に 世界に 僕はいらない」
そう、彼の理想とする百合世界には自分がいちばん邪魔なのである。笑い事ではない、これは彼の実存に関わる問題なのだ。さらに、彼には、次々と難問が振りかかり、その度に苦悩し、結果としてメガネを割られることになる。

果たして、彼に救いはあるのか。ひいてはアニメで『ゆるゆり』にハマり、『百合姫』を読むようになり、百合というイバラの道を歩むことになってしまった僕らに救いはあるのか。僕らは(っていうか僕は)この作品と共に苦難の道を歩み続けるのである。


たしかに百合はいい、そうだよな啓介

啓介につきまとう難題

百合男子は百合姫の内部批評やパロディなどもふんだんに入り込んでいる。百合姫も必ず買うべし

百合について熱く語る男たち、果たしてこの議論の前にあるものは?

作者のスランプから生まれたという百合男子。「ギャグだと思って描いてません」とのこと