ジェーン・スーさんが語る40代の日常。加齢の中で“ひとまず上出来”に生きるには?

文芸・カルチャー

公開日:2022/1/13

ひとまず上出来 (文春e-book)

著:
出版社:
文藝春秋
発売日:
ひとまず上出来
『ひとまず上出来』(ジェーン・スー/文藝春秋)

 年齢や性別なんか関係ない、というのが理想だし、属性で人を分類することも、自分を縛ることもしたくない。とはいっても、歳を重ねることによる変化はどうしたってあるし、そういうときにすがりたくなるのは同じ性別で同世代か少し年上の人の体験談。ジェーン・スーさんの著作は多くの女性にとってそんな存在なのではないだろうか。少なくとも、30代の私の中では、スーさんというよりも、スー様に近い。おお、スー様よ、あなたはどうしてこんなにも私が悩む先を行ってくれるのか。

 新刊『ひとまず上出来』(文藝春秋)は、スーさんの日常に起こったあらゆる出来事が綴られており、そのほとんどは40代という年齢に付随するものである。例えば、下着を新調しに行くにあたって、今までジャストサイズだと思っていたものが間違っていたこと。ワンサイズ上げたらそれはそれはジャストフィットだったという。これは昔からずっと間違っていたものもあれば、おそらく年齢による体型の変化ゆえもある。悲しいかな、人の体は日々少しずつ変わっているわけだ。

毎日は選択の連続。しかし、選択の基準は意外と更新されていません。中年になると小さな選択が脳に多大な負荷をかけてくるので、ものさしを見直すのが難しいことになってくる。

 とスーさん。そう、そう、これなんですよ……! 特に30代から徐々に自分のことがわかってきて、下着に関わらず様々なものの“ジャスト”をノータイムで選べることが増える。こうやって、(たぶん昔よりは衰えている)脳のリソースを割かないようにして生きるうちに、ジャストの更新もサボることになるのですな。

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 このほかにも、「楽しそう」に見られたかった20代に比べて、40代の今は「いつでも元気」に見られたい話。昔よりも、「ていねいな暮らし」がいつまでたってもできない話。毎年必ず年始だけ手帳をキレイに書いている話。どれもこれも思い当たるフシがありすぎる……。

 また、まだ実感はないものでも、これから先、間違いなくそうなるのだろうと思える何よりの説得力は、スーさんが語る若い頃の話があまりにも身に覚えがあるから。少し前のポケモンGOブームで、アプリを入れて不忍池までコイキングを捕まえにいったというスーさんは、この日のことをこう語る。

試しもせずに「流行りものに乗るのはバカ」と逆張りすることこそが、最も格好悪いことだと思います。まさに二十代の私です。数々の流行に対し、斜に構えて無駄な抵抗を繰り返したあの頃よ。

 ああ、もう、なんとも目を背けたい恥ずかしい過去よ。10代、20代の半ばくらいまでは、一体何と戦っていたのか、逆張りしまくっていたなぁ……。「ディズニーランドなんて」と言っていた10代の頃の自分を殴りたい(その後、逆張り病が雪解けしてから行ったディズニーランドはたいそう楽しかったのじゃった)。

 地球滅亡前夜に何を食べたいかを綴る項では、明日、地球が滅亡するならばカロリーも健康も気にせず何でもじゃんじゃん食べられるのにと悶々しつつ、未来の健康のために自制心に思いを馳せるスーさん。そう、まさに私は今、いつまで生きるかもわからないというのに好きなことを忌避してばかりじゃやってられない精神で、何も気にせずじゃんじゃか飲み食いしている30代なのだ。20代からこっち、震災、水害、コロナ、と続けばこうもなる。だからといって、病気で苦しむのも嫌だしなぁ……。

 加齢は楽しいことか、それとも苦しいことか、と問われると、

現時点では六:四で楽しいと言えます。さすがに七:三とは言えないけれど。歳を重ねるごとに人生は味わい深くはなるものの、「若い頃よりずっと楽しい」と弾けるような笑顔で喧伝するのも、それはそれで嘘くさいと思うのです。

 とあまりにもリアルで、あまりにも信用できるスーさんの言葉を胸に、今日も日々、加齢と人生について考えつつ、適度に楽しんでいこうと思います。生きるって難しい。

文=朝井麻由美(@moyomoyomoyo

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