きのこ専門企業「ホクト株式会社」が監修!!携えて探検に出てみたくなる、美味しくって不思議な“きのこ本”

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公開日:2022/3/31

不思議で怪しいきのこのはなし
『不思議で怪しいきのこのはなし』(ホクトきのこ総合研究所:著・監修/清水書院)

 読書をしていると、これってどうなのか、ここは何なのか、とどんどん興味の対象が広がっていくことがある。以前ダ・ヴィンチニュースで『SUPERサイエンス 生物発光の謎を解く』という本をレビューした際、その中に「江戸時代に提灯の代わりにツキヨダケという光るキノコが夜道を歩くのに使われたと」いう記述があったけれど、あくまで発光生物の一例としてだった。また、同じく『ほんとうはびっくりな植物図鑑 ありふれた草花の秘密がおもしろい!』のレビュー時にもこのツキヨダケのことが載っていたものの、菌類は番外編という扱いだったためその時は触れなかった。こうなるともう、ツキヨダケのことが気になって気になって仕方なくなり、『不思議で怪しいきのこのはなし』(ホクトきのこ総合研究所:著・監修/清水書院)を入手した次第だ。

 タイトルでまず飛びついたため手元に来るまで気がつかなかったのだが、本書の監修をしているのは、あの「ホクト株式会社」である。もともとは食品包装資材の販売をしていて、ガラス製だったキノコの栽培容器に代わり、軽くて丈夫なポリプロピレン製の容器の製造販売を始め、「きのこ総合研究所」を設立してからは新品種のキノコの開発までするようになったというキノコ専門企業だ。本書によると、長さ59cm、重さ3,580gもの巨大なエリンギを育て、「世界一長い食用きのこ」としてギネス世界記録に認定されたそうで、このあとの研究内容にもワクワクしてしまう。

植物でも動物でもないキノコの正体とは?

 倒木に生えることの多い「きのこ」は、「木の子」を語源とする説があるそうで、スーパーなどでは野菜売り場に並んでいるため「きのこは植物」と思っている人もいるだろうけれど、生物の分類で云えば「菌類」の仲間。なんと肉眼で見えているのは本体ではなく、菌が子孫を残す時期が来ると形成する生殖器官であり、専門用語では「子実体(しじったい)」と呼ばれているのがキノコの正体。

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 そして、この子実体がお菓子の『きのこの山』に代表されるような傘と柄があるタイプの「担子菌類」と、でこぼこした形や皿形などの「子のう菌類」のタイプの2つに大別され、前者だけでも国内に約4000~5000種、世界では2万種を超えるとか。子実体の役割からすれば植物の花のようであるものの、DNAを解析した結果からは動物に近いというから、やはり生物としてはなんとも不思議な存在だ。

キノコは美容とダイエットの味方!?

 本書に載っているキノコは、104種。アイウエオ順に並んでいるので、名前を知っていれば探しやすく、後ろのページには図鑑としても活用できるよう写真付きで属と学名が載っているので、実際にキノコを観察する際にも役に立つ。もちろん私がこの情報を使って最初に開いたのは、ツキヨダケのページだ。漢字では「月夜茸」と書き、写真を見るとシイタケに似ていて美味しそうに思えてしまうが、残念ながら毒キノコ。他に最も明るく光るキノコには「ヤコウタケ」というものがあり、国内では八丈島に自生しているという。

 食べられるキノコのページには食用マークが付けられており、秋鮭との包み焼きや、トマトパスタなどキノコを使った料理のレシピも載っている。キノコは「脂質がほぼゼロ」な低カロリーでありながら、ビタミンB群が豊富なうえ食物繊維により腸内環境が改善されるため、健康的なダイエットにも活用できることも解説されている。

 そして、食用のキノコの中に、野生と栽培された物とでは形が異なる物があって驚いた。純白でヒョロ長い束になっているエノキタケは、野生だと傘の径が2~8cmも開き、色も黄褐色の物から暗褐色の物まであるそうで、とても同種に見えない。それから紛らわしいのが、「においマツタケ、味シメジ」と呼ばれているのは「ホンシメジ」なのに対して、「売られているシメジはほとんどがブナシメジかヒラタケの栽培品」だという。

見た目によらないことも。毒キノコには注意!

 ホンシメジの紹介には、“姿形が似ている有毒の「イッポンシメジ」と間違えないように”と注意書きがなされているように、本書では毒キノコも多く収載されている。「おとぎ話の絵本やアニメ、雑貨などに登場する代表的なきのこ」として紹介されている「ベニテングダケ」は、いかにも毒々しい感じがするが、長野県の一部の地域では毒抜き(塩漬け )をして食べられているのだとか。一方、食用マークが付いている「クリタケ」は、「近年、弱い毒成分を含むことが確認された…食べすぎ注意!」なんてことが書いてある。なお、本には食用とそうでないものを分けて記載しているが、もし実際にこれらのきのこを見かけたときには、興味本位で口にしたりせず、情報を念入りに調べていただきたいと思う。

 それでも本書を読んでいたら、やたらと食欲が刺激されてしまった。キノコの世界は、奥が深いのである。

文=清水銀嶺

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