違法サイト「漫画谷」を撲滅せよ! 漫画家志望のアシスタント、実はスゴ腕の弁護士──!?

マンガ

更新日:2022/3/31

弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい (1)
『弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい (1)』(ゆうきまひろ:原作、武村勇治:作画/小学館)

 コロナ禍において「巣ごもり」が推奨され、漫画の売り上げも好調に推移したという。しかし一方で、深刻な状況も生まれていた。それが「海賊版」問題である。「海賊版」とは著作権を無視して、インターネットなどで勝手に頒布された漫画などのコンテンツを指す。一説によると、2021年の海賊版の被害額は1兆円以上にものぼるという。このままでは漫画文化そのものが衰退してしまう。『弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい (1)』(ゆうきまひろ:原作、武村勇治:作画/小学館)は、漫画をこよなく愛する「漫画家になりたい」弁護士が、漫画界の危機を法律によって救う物語である。

 本作の原作を担当するゆうきまひろ氏は、現役の弁護士。それだけなら驚きは少ないかもしれないが、実はあの「漫画村」の運営者を特定したスゴ腕の人物だったのだ。漫画村とはご存じの方も多いと思うが、かつて海賊版の漫画や雑誌などが無料で誰でも閲覧できたWEBサイトである。しかし関係者の努力もあって、2018年に閉鎖に追い込むことができたのだ。そのとき原告である漫画家の代理人弁護士となったうちのひとりが、ゆうき氏なのである。

 漫画が好きで人気漫画家・凄久盛雄の下へアシスタントにやってきた亜蘭陸法が本作の主人公。しかし彼には漫画家としての才能が乏しく、一向に作画技術は上達しない。凄久が「限界か……」と感じ始めたころ、事件は起こる。凄久のかつてのアシスタントで、漫画家デビューした由芽叶人が絶望の表情で現れたのだ。彼の漫画は人気があったが、単行本がまったく売れず打ち切りになりそうだという。なぜ人気があるのに単行本が売れないのか。それは悪質な違法アップロードサイト「漫画谷」が原因であった。そこでは発売された雑誌や単行本が即日アップロードされ、あえて買わなくても読める状態になっていたのだ。漫画が理不尽に打ち切られそうな叶人に、陸法は告げる。「僕が何とかします」と。そう、彼は漫画家を目指してアシスタントに励む、スゴ腕の弁護士だったのだ!

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「漫画谷」を運営する男は、海外のサーバーを巧妙に使って40人以上の手下にそれぞれ漫画をアップロードさせていた。日本からではサーバーを閉鎖できないので、陸法は海外へ飛んで情報開示の申し立てを行なっている。もちろん漫画ならではの演出は盛り込まれているのだろうが、実際「漫画村」の運営者特定に際しても、似たようなことが行なわれたようである。結果、運営者は特定され、裁判によって有罪が確定。「漫画谷」は閉鎖となった。このあたりの展開は、さすが実務を担当した人物だからこそのリアルさが感じられる。

 こうして違法サイト事件は解決したが、まだまだ亜蘭陸法の活躍は終わらない。なぜなら漫画家を襲う違法性の高い事案は他にも多く存在し、彼らを苦しめている。漫画を愛する陸法は、法の力を以ってそれらを解決しなければならないのだ。そして何より、彼には「漫画家になる」という目標がある。とはいえ、まったく漫画が上達しない陸法は本当に漫画家になれるのか、普通に弁護士でいいんじゃないか──そんなヤボはいいっこナシなのである。

文=木谷誠

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