仇討ちと家の再興のために! 剣と肉弾戦の熱すぎるガンダム時代劇コミック『機動戦史ガンダム武頼』

マンガ

更新日:2022/1/25

機動戦史ガンダム武頼
『機動戦史ガンダム武頼』(礒部一真:漫画、矢立肇・富野由悠季:原案、諸星佑吾:デザイン協力/KADOKAWA)

 謀略によって滅ぼされた国の再興を果たす為、生き残った姫と家臣、巨大ロボット「頑駄無」を操る侍が立ち上がった……。

 雑誌『ガンダムエース』(KADOKAWA)で連載している作品の中で、ひときわ異彩を放っている“時代劇コミック”が『機動戦史ガンダム武頼』(礒部一真:漫画、矢立肇・富野由悠季:原案、諸星佑吾:デザイン協力/KADOKAWA)だ。

 ガンダム作品としてはかなり独特の雰囲気を持っているが、シリアスなストーリーがいい意味で期待を裏切り、ガンダムファンならば聞いたことのあるキーワードが全体に散りばめられていて読んでいてとてもアツい。

 本作の魅力は礒部一真氏が作り込んだ、そんなオリジナルの世界観と、「鉄機」のド迫力バトル、そして多くの謎がちりばめられたストーリーである。

機動戦史ガンダム武頼

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巨大ロボ「鉄機」による武闘会「参勤鋼對」に「頑駄無 武頼」参戦!

 舞台は人が乗り込む巨大な鎧武者「鉄機」による戦乱が続いた世界。それぞれの国は藩と呼ばれ、覇権を争っていた。戦いは徳轟家(とくごうけ)という軍勢が平定し、その統治により仮初めの平和が訪れていた。その徳轟家は、天下泰平と武芸奨励の為、鉄機による武闘会「参勤鋼對(さんきんこうたい)」を数年ごとに開催していた。

 そこには権力を示さんとする者、力を試さんとする者、そして己が目的を果たさんとする者が集う。勝ち残った者には“望むもの”が与えられるからだ。「鉄機」は基本的に刀などの得物で戦い、文字通り火花を散らすバトルを展開する。

 主人公・如月虎鉄(きさらぎこてつ)は、無実の罪を着せられた亡き主君の仇を討つ為、そして自分の仕えていた天炉家(あまほどけ)を再興する為に、仲間たちと共に「武頼」(ぶらい)という名の「鉄機」で「参勤鋼對」に参加しようとしていた。

機動戦史ガンダム武頼

 虎鉄が命を救った「鉄機鍛冶」(整備員)の少女・機本錫乃(きもとすずの)は、別れ際に「武頼」を「頑駄無」(がんだむ)と呼んだ。それは古来より数多くの災いを退けた武神、頑駄無尊(がんだむのみこと)になぞらえたもので「虎鉄たちを激しい戦いの中で守ってくれる」と錫乃は言う。

 虎鉄は「良い名だ、気に入った」と気を引き締め、徳轟家に「参勤鋼對」へのエントリーを直訴する為に、江都へ向かう。

 旧天炉家の面々は、徳轟家のトップ・総全(そうぜん)から「参勤鋼對」への参加が認められる。対戦相手は徳轟家に仕える各藩の代表たち。初戦は十契藩(とちぎはん)の刃兎裏半蔵(はっとりはんぞう)に決まる。虎鉄は半蔵の仕掛けてきた卑劣な罠(?)にかかり絶体絶命のピンチを迎えるが……?

 果たして「頑駄無 武頼」は各藩の鉄機を打ち倒し、勝ち残れるのか。そして虎鉄は仇敵の正体をつきとめ、天炉家を再興できるのか?

機動戦史ガンダム武頼

“仮面の男”の正体は? 虎鉄たちが追う仇敵の目的は? 徳轟が捜し求める「鉄機」とは?

機動戦史ガンダム武頼

 本作の見どころは真っすぐな主人公の侍・虎鉄を中心にした、直球・王道のロボバトルなのは間違いない。さらにストーリーも奥深い。シンプルに家の再興を目指す虎鉄たちの戦いの裏で、特別な「鉄機」を探し求める徳轟家と、天炉家を潰した仇敵の暗躍が描かれ、複雑な様相を呈している。さらに多くの謎もちりばめられているのだ。

機動戦史ガンダム武頼

「頑駄無」に異常な執着をみせる徳轟四天王の一人、“仮面の男”イカルガとは何者なのか。

 もともと隠されるように祭られていた「武頼」は、実は分かっていないことも多い。その秘密とは。

 天炉家を陥れ、潰した理由と仇敵の正体は? そして彼らが狙う「十種の鍵」(とくさのかぎ)とは何か。

 虎鉄と同様、天炉家に仕える忍衆・黒星のワケありな行動の理由は?

「武頼」をはじめ、ほとんどの「鉄機」は古代の遺物で、埋まっていたり隠されていたりしたものを復元したもの。徳轟家は全国でその発掘を続けている。徳轟総全が捜し求める「鉄機」とは一体どんなもので、物語にどのようにかかわってくるのか。

 2巻まででは、ほぼ何も明かされておらず、謎は増える一方である。波瀾万丈の物語はまだ始まったばかりだ。独自の世界で展開するガンダム時代劇から、目が離せない。

文=古林恭

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