三谷幸喜の初小説! 読書&歴史が苦手な人でも楽しめる人間ドラマ

小説・エッセイ

更新日:2012/10/22

清須会議

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:三谷幸喜 価格:1,176円

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人の行動って、大なり小なり“欲”が起点となっていますよね。お坊さんだって、そもそもは“悟りたい”と欲したから出家したわけで。何かが欲しいと思ったらそのために動くのが人間です。

主君の遺志を継ぎたい、憎き相手に復讐したい、他を蹴散らしてでも天下を取りたい……様々な欲望がぎゅんぎゅんに渦巻く5日間を描いたのがこの『清須会議』なのであります。

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天下統一を目前に、明智光秀の謀反により本能寺にて命を落とした織田信長。清須会議は、光秀が討たれたあとに開かれた、織田家の当主を決めるために開かれたもの。

あんぽんたんだけど長男亡きいま正当な後継者である次男・信雄か、はたまた信長ほどの器はないが聡明な三男・信孝か。信雄の後ろには羽柴秀吉、信孝の後ろには柴田勝家がつき、そこに丹羽長秀や黒田官兵衛、前田利家にお市の方、寧(寧々のほうが一般的ですね)など歴史上の名だたるメンバーが加わるものだから、思惑が交錯しまくり事態は混戦状態。さてはて会議の結論やいかに?

なんだかかたくるしい時代小説みたいなあらすじですが、そこはやっぱり三谷さん。ものすごくコミカル。ものすごく人間くさい。それぞれの“欲”を、ある意味でストレートに悪びれず描いているので、読んでいてなぜだかとても心地いいのです。

最終的に秀吉が勝利するのは誰でも知っていること。だけど、どんなふうに欲がからみあって策謀がめぐらされていくのか、その道程をたどっていくのがとても愉快。人が誰も死なないっていうのも、気軽さの一端かもしれません。とはいえ、参加者の人生の岐路である重大な会議。私利私欲だけでなく、家に捧げる忠誠心や愛憎なんかも入り乱れて、そのあたりのままならなさも読みどころのひとつです。

この作品、三谷さんの初小説ということですが、全編とおして登場人物それぞれの一人語りで進み、なおかつ現代語訳してあるので読みやすい。どこかシナリオを読んでいるような感触もあるので、ふだん読書をしない方にもおすすめです。かといって映画化した際に同じものになるとも思えない。描かれている情緒はたぶん、小説でしか味わえません。映画ではきっと、この小説の隙間を描いてくれるんだろうなと思うので、ものすごく楽しみ。公開前にご一読することをぜひ! おすすめいたします。


冒頭の、信長最期のシーン。このコミカルな語りに全編とおして引き込まれます!

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未発表の映画キャスト。誰がやるのかな~なんて想像してみるのも楽しい