『東京喰種トーキョーグール』石田スイ氏、待望の最新作! 「超人」の力で混乱した世界に生きる人々の物語

マンガ

更新日:2022/3/8

超人X 1
『超人X 1』(石田スイ/集英社)

 2011年に連載が始まるや話題を呼び、アニメや実写映画にもなった漫画『東京喰種トーキョーグール』。その衝撃的な題材もさることながら、作者の石田スイ氏による独特な線描も大いに評価された。漫画は続編が2018年まで連載され、完結。人気作家としての地位を確立した石田氏には当然、次なる新作への期待が高まることになった。そして2021年5月、WEB漫画サイト「となりのヤングジャンプ」にて、ついに最新作『超人X』の連載がスタート。本作は『週刊ヤングジャンプ』にも掲載され、『超人X 1』(石田スイ/集英社)としてコミックが発売された。

 本作の世界観は「超人」が普通に存在する特殊なものであり、その超人によって大戦が起こり世界は混乱。国家の概念は崩壊したが、自治県が作られ人はそこで生活をしているといった状況である。物語は「ヤマト県」と呼ばれる自治県を舞台に、「黒原トキオ」と「乙田エリイ」の主人公ふたりが超人の力に目覚め、他者を救うため戦う姿が描かれる。

 乙田エリイは農作物の品評会に出席するため飛行機でヤマト県へ向かっていたが、煙の超人「チャンドラ・ヒューム」によるテロに巻き込まれ飛行機は墜落してしまう。しかし大惨事になるはずだったこの墜落は、超人の力に目覚めたエリイの能力によって多くの人間が救われる結果となる。だが超人の力に目覚めたことにより、今度はチャンドラ・ヒュームに追われることになるエリイ。絶体絶命の中、彼女を救ったのはヤマトを守る超人「星・サンダーク」だった──。

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 もう一方の主人公である黒原トキオは、友人の東アヅマと共に不良に絡まれていた女性を助けていた。とはいえ、助けるのは文武両道のアヅマの役割で、トキオは主にそのサポートなのだが。しかし撃退した不良がトキオたちに意趣返しを仕掛けてくる。その不良は謎の人物から「超人になれる薬」を渡され、超人となっていたのだ。圧倒的な力の前に窮地に陥るトキオとアヅマだったが、偶然にも不良が持っていた「薬」を手に入れる。ふたりは互いに薬を打つのだが、トキオだけが超人の姿に変貌。ハゲタカのような姿に「獣化」したトキオは、不良を一撃で吹き飛ばすのだった。

 超人となったトキオではあったが、元の姿に戻れず途方に暮れる。そんな中、彼の力を試すため、新たな超人が送り込まれてきた。ナリというその女性は、自らをヘビの姿に変えられる「獣化の超人」だ。凡人の烙印を押され、ナリに殺されそうになるトキオだったが、間一髪で救いの手が差し伸べられる。トキオを救ったのは、超人となった乙田エリイ。ここにふたりの主人公が邂逅を果たすことになる──。

 この作品はトキオとエリイ──ふたりの超人が人々を救うために奮闘する物語である。これまでは常にアヅマについていく形で生きてきたため自分に自信の持てないトキオと、とにかく一所懸命で猪突猛進なエリイ。このふたりが互いに影響を与えあいながら、悪をなす超人たちと対峙していくのだ。もちろんこのふたり以外にも、ユニークだったり妖しげだったりとさまざまなキャラクターが登場するのは、石田氏の作品のお約束。そして未だに全容を見せない「超人同士の争い」など、世界観も深みがあって期待できる。ちなみに巻末には登場キャラクターによる世界観の解説も掲載されているので、本編では分からなかったことも随時補完されていくだろう。石田スイ氏の描く線が生み出すテンポ感も相まって、漫画としての完成度は非常に高い。今後も『超人X』から目の離せない日々が続きそうだ。

文=木谷誠

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