営利企業なんだから保険会社だって儲からない商売はしないのだ

公開日:2012/11/15

生命保険の罠 保険の営業が自社の保険に入らない、これだけの理由

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:後田亨 価格:594円

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私も通常憤慨していることを、この著者がありありと書いてくれていたので、いっぺんに共感して読み始めた。

ほかでもない銀行のATMである。ATMでお金を引き出すあるいは送金する。その折、銀行はどこだ金額はいくらだ暗証番号はどうなってるのだ、さんざん画面を押させといて、あげく手数料を取るのだ。手数をかけたのはこっちなのに。第一、その引き出した金は俺のだ。それを預かって商売して儲けてるのに、そのうえ手数料ってなんだよ。二重取りじゃん。おまけにときどき残高がありませんだのとぬかしやがる。それはまあ僕のせいだが。

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とにかく、銀行の手数料おかしいじゃん、という隠された穴を見つけ出す視線で、保険という名の落とし穴を著者は暴いていって、爽快なのである。爽快になりながら、今まで平気で選んだり入っていたりした保険に、ちょっと鳥肌が立ってくる、そういう本だ。

著者は元大手保険会社で営業、つまり勧誘の仕事をしていただけあって、裏も表も知り抜いた手厳しい批判がぐんぐん繰り出されてくる。ええっ、ほんとかよ、と読んでいて唸る箇所多々である。けれど、基本的には、保険というシステムそのものの有用性は認めつつの辛口であるから、単なる悪口の羅列にはならず、あくまでも被保険者つまり読者の側に立っての観察であるのが、本書の確かさたくましさに通じているんだと思う。

まず著者が言うには、保険の営業マンの第一鉄則。お客様に「聞かれない限り言わない」。怪しいビデオレンタル屋の入会規則そこのけと思いません? つまり、明らかに被保険者に不利な条項があって、でもそれについては触れずにおく。触れないまま契約を結んじゃうということらしいのだ。そうやって入ったのだ、あなたも。

たとえばの話、さまざまな保険プランにおける利益率というか、原価ね。7割なんですと。30パーセントがまるまる保険会社の取り分。「定期特約付き終身保険」ていうよく聞くやつね。これの計算方式、生涯にいくら払ってもらうかの計算ね、「お客様の死亡率は高めに、会社経営にかかる経費は多めに、市場金利などは低めに見込んで」算出する。すごいことになってます。

10年ごとに帰ってくる「お祝い金」。これもちろん含んだ上の30パーセントに計算してある。60歳で払い終える終身保険。もちろんそれ以前の支払いに前倒ししてのせてある。でもって、そういうことは「聞かれない限り言わない」。

真骨頂は第6章。保険勧誘や社内の風景の具体的な事例をあげての、悪口のオンパレードなのである。笑える。ひとごとじゃないのに、あまりの無茶苦茶さについ笑ってしまう。この章を読むだけでも購入する価値はあるのでは、と思うのだった。


在職していた頃の実感で書かれているのがリアル

このATMの話で一気に引き込まれた

実名で批判するところがなかなか侮れない