人脈は、多ければ多いほどいい――そんな人脈神話に捉われた「出会い癖」は身を滅ぼす?/君は誰と生きるか
公開日:2022/11/14
予定不調和どころではなかった。想定していた答えと返ってきた答えがあまりにも違いすぎて、僕の頭は完全にフリーズした。
目の前にいる人が何を言っているのか、その意味がよくわからなかった。
「そ、そんなことはないです。お金も時間も僕は出会いに投資します」
「何のために?」
「そ、それは将来のためです。人脈を増やすためにです」
見えないところからカウンターパンチを浴びてふらつくボクサーのごとく、僕はノックダウン寸前だった。
「僕は間違っているのでしょうか?」
思わずクリンチした。くたびれたり倒れそうになるボクサーが相手に抱きつくあのクリンチだ。
「ううん、間違ってないよ、一般的にはね。若いのにそんなに人に出会ってでも成功したいという思いはたいしたもんだ。でも、多くの人がその出会いを求めすぎたあげくに今やるべきことが疎かになる。結果的に本当に大切な人を見失って、身を滅ぼすんだよ」
戦意喪失、ノックアウト。
僕はおとなしくリングの端っこに座り、相手の話に耳を傾けることにした。
「もう一度聞くけど、君は何でそんなに多くの人と出会いたいんだい?」
「いや、なんかいいチャンスがあるかなと」
「ということは、言葉を選ばずに言えば、自分にとってのメリットがほしくてその人たちに会いに行っているってことだよね?」
「え、あ、いえ……」
自分の心の底の底を言語化された気がして、僕は返す言葉を失った。
「もちろん誰でもそんな思いはある。『この人に会えばいいことあるかも』ってね。でもさ、例えば立場が逆だったとして、君のところに人が来るときに、『永松さんから何かもらいたい』って下心満載な人が集まってくるのってくれしい?」
「……いや、それは少し切ないです」
「そうだよね。もちろんどんな人でも多少のメリットは求めるものだ。それは悪いことじゃない。ということは、君が出会いたいと思っている人も、なんらかのメリットを求めていると思って間違いないよね。
じゃあ、はたして君は相手にどんなメリットを与えることができるんだい?」