人脈は、多ければ多いほどいい――そんな人脈神話に捉われた「出会い癖」は身を滅ぼす?/君は誰と生きるか
公開日:2022/11/14
正直、そんなことは一度も考えたことがなかった。
最低限、手土産くらいは持って行ってはいたが、僕が出会いたい人たちの多くは、そうした手土産などはもらい慣れている人たちだった。中には社長室に封を開けていないままの手土産が積まれている人もいたくらいだ。
「君は今、何歳だったっけ?」
「ちょうど30です」
「商売を初めて何年かな?」
「4年が経ちました」
「そうか。まだ創業期と言ってもいい頃だね。だったら、まだあまりお金は潤沢じゃないよな」
「はい、正直、ゆとりはありません」
いえ、十分儲かっています——。
本当はそう言いたかったが、正直その当時の僕のビジネスは、まだカツカツで回していた状態だった。だからこそ、「社会的に力のある人に出会えば有利になるかもしれない」と思っていたのだ。
ここまできてウソをついても仕方がないので、そう言った。
そして、ここからのやりとり、もらった問いかけが、僕の人生を大きく変えてくれることになった。
「私には、今の君がやっている方法が遠回りをしているように思えて仕方ないんだよ。確かにね、君の言うとおり、どんな人と出会い、どんな人と歩くのかで、人生は大きく変わるよ。その相手次第で行き先がハワイになったり、南極になったり、もしくは牢獄だったりすることもある。逆に誰も行ったことのないパラダイスにたどり着くことだってある。そのくらい、ともに歩く人って大切な存在なんだよ」
それまで信じてきた価値観の盲点をつかれ、混乱していた僕に、その人はこう尋ねた。
「ここからの人生、君は誰と生きる?」
<第2回に続く>