イーロン・マスクが判断軸とするマトリクスとは?「バカになれる資質」が成功の条件/本当の頭のよさを磨く脳の使い方

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公開日:2022/12/10

◉「バカになれる資質」が成功の条件

 ダニエル・C・デネット(1942〜)の『自由の余地』という本の中で、非常に印象的な部分があります。それは、「本当の頭のよさ」のポイントの1つとして、逆説的に「バカじゃないと駄目だ」と書いてあるのです。

 これが実に的を射ているなと感じるのは、アニマルスピリッツを持った成功者たちは、ほぼ例外なく「バカになれる」資質を兼ね備えているからです。

 「成功」の定義は人それぞれでしょうが、少なくとも世の中を席巻してきたような成功者たちは、自分の野望を誰に話すわけでもなく、普段は野心をあまり表に出さなくても、ここぞというタイミングが来るときわめて大胆な行動をとったり、周りを驚かせたりします。

 

 たとえば、イーロン・マスク(1971〜)。彼を知らないビジネスパーソンはいないでしょう。宇宙ロケットを製造開発する「スペースⅩ」や電気自動車を開発する「テスラ」を創業した、言わずと知れた世界トップクラスの実業家です。

 彼が価値判断する際に用いている軸に「クレバー/フーリッシュ・マトリクス」というものがあります。

 イーロン・マスクは、何か新しい事業に挑戦するときに、このクレバー/フーリッシュの軸に照らし合わせて、「やる/やらない」を決めていると分析されています。

 直訳すると、クレバーとは賢い、フーリッシュとは愚か。イーロン・マスクが判断軸としているものは、クレバーが挑戦に値すること、フーリッシュが挑戦する価値がないこと、ととらえてもいいでしょう。

 自分から見てクレバーかフーリッシュかを横軸に、他人から見てフーリッシュかクレバーかを縦軸にしていくとマトリクスが完成します(次ページ図)。

 そこには、次の4つのゾーンが出現します。

 

 ①自分から見て賢いクレバーと思う & 他人から見て愚かフーリッシュだと思う
 ②自分から見て賢いクレバーと思う & 他人から見て賢いクレバーと思う
 ③自分から見て愚かフーリッシュだと思う & 他人から見て愚かフーリッシュだと思う
 ④自分から見て愚かフーリッシュだと思う & 他人から見て賢いクレバーと思う

 

 この4つのゾーンのうち、イーロン・マスクが重視するのは①です。他人から見ると愚かに見えても、自分にすれば賢いと思えるものこそ、事業として成功の確率が高く、優先的に取り組むべきというのが彼の考え方なのです。

本当の頭のよさを磨く脳の使い方

 たまたまイーロン・マスクは自覚的に、あえて言語化しているためにわかりやすいですが、成功者たちは大なり小なり「他人から見て愚かだが自分にとっては賢い挑戦」にチャレンジしています。

 スティーブ・ジョブズもそうですよね。当時、フューチャーフォン(いまで言うガラケー)が主流の携帯市場に突如現れたiPhone。日本のフューチャーフォンの開発者たちは「あんなものは売れない」「電話にウォークマン機能はいらない」とさんざん酷評しました。

 ところがiPhoneはあっという間にシェアを伸ばし、「携帯電話」の概念を変えたスマートフォンがいまや一世を風靡していることはみなさんよくご存知のはずです。

 

 成功者たちがこれまで果敢に挑んできた新しいチャレンジ。

 たとえ、まわりから「あいつはバカなことをやっている」と思われようが、そんなのおかまいなし。なぜなら、そうした成功者たちは周りの人間が「これはさすがに無理」「リスクが高すぎる」ということでもあきらめず、果敢にチャレンジしたからこそ、大きな成功を手に入れることができたのです。

<第6回に続く>

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