『わらしべ長者』あらすじ紹介。1本のわらしべがお屋敷に!? 信心深い若者のサクセスストーリー

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/22

 神仏への信仰心やひたむきな努力によって、貧困から財をなす物語やおとぎ話は、世界各地でみられます。日本におけるその代表的な例として、多くの人に知られているのが『わらしべ長者』です。この物語、実はいくつかのバリエーションがあることをご存じでしたか? 本稿では『わらしべ長者』の概要と登場人物、あらすじをご紹介します。

わらしべ長者

『わらしべ長者』の作品解説

 本作は日本に伝わるおとぎ話で、古くは平安時代末期の『今昔物語集』や鎌倉時代前期の『宇治拾遺物語』にも原型がみられます。本稿で紹介する「観音祈願型」のほかに、婚約者の父に押し付けられる無理難題をテーマとした「三年味噌型」と呼ばれる筋書きも存在しており、物々交換の品物は違いますが、幸運が訪れるという点は共通しています。

 また、「観音祈願型」では家屋敷を手に入れてお金持ちになり、「三年味噌型」ではお金持ちの娘との結婚を許されるという形で、逆玉の輿を成功させるストーリーです。

『わらしべ長者』の主な登場人物

若者:貧しい農民。働けど働けど暮らしが楽にならないことを嘆く。

観音さま:若者をあわれみ、お告げを与える。

母親と男の子:若者が最初に出会う、やんちゃ坊主とその母。

奥様とお供:身分ある旅の女性とその従者。

お侍の一行:立派な馬に乗り、家来を引き連れた侍。

屋敷の主人:若者が最後に出会う人物。立派なお屋敷から引っ越す。

『わらしべ長者』のあらすじ​​

 あるところに貧しい若者がいました。毎日せっせと働いても一向に暮らしが楽にならないので、ついにお寺に行って観音さまへ祈ります。必死に祈るうちに眠り込んでしまった若者は、夢の中で観音さまに「お寺から出て最初に手に入れたものを大事にしなさい」とお告げを受けました。

 目を覚ました若者が寺から出たところ、寝ぼけて転んだ拍子に、1本のわらしべ(稲わらの芯)を手に入れます。観音さまのくださったものかと握りしめて歩いていると、大きなアブが飛んできました。うるさく思った若者がわらしべの先にアブを結びつけると、それを見た男の子が面白がって欲しがります。若者がアブ付きわらしべを男の子にあげると、母親はお礼に立派なみかんをくれました。

 喜んで歩いていった若者は、喉が渇いて道端にうずくまっている奥様を見かけます。お供から近くに井戸はないかと聞かれた若者は「井戸はないがこれならある」と、みかんを差し出して助け、奥様はお礼に美しい絹の織物をくれました。

 若者がまた喜んで歩いていくと、今度は立派な馬に乗った侍が家来を連れてやってきます。見とれていたのも束の間、なんと若者の目の前で馬がばったりと倒れ、動かなくなってしまいました。先を急いでいる侍は家来たちに後を任せ、替え馬に乗って行ってしまいます。困り果てる家来たちに、若者は織物と馬を交換しようと申し出て、家来たちは喜んで馬を差し出しました。

 水を飲ませるとたちまち元気になった馬にまたがり、若者はにぎやかな町にたどり着きます。中でも特に立派な一軒の屋敷では、総出で引っ越しの準備をしていましたが、馬が足りず困っているようでした。若者が屋敷の主人に「馬をあげましょうか」と声をかけると主人は喜び、屋敷と田んぼを即決で若者へ譲り渡しました。

 こうして、わらしべが巡り巡って立派な屋敷と土地になり、裕福となった若者は“わらしべ長者”と呼ばれていつまでも幸せに暮らすのでした。

『わらしべ長者』の教訓・感想​​

『わらしべ長者』の物々交換の根底にあるのは、「困った人を助けたい!」という若者(わらしべ長者)の優しさであると思います。困っている人を助ける優しさを持てば、きっと報われることがあるという昔の人たちからのメッセージが感じられますね。

<第17回に続く>

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