絵を描く最初の一歩目はまず「絵を描くこと」。そしていざ白紙の画用紙を前にして気がつく事実/美術の進路相談④

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/26

描けないときに、知らないと気がつく

美術の進路相談

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「おや、花が咲いている」と気がついても、一つまばたきをしたら別の場所へ目がうつる。私たちの視界は簡単にぼやけ、ゆらぎます。

 家族や友人のお誕生日。似顔絵を描いてプレゼントしようとしたあの幼き日に、画用紙と向き合って戸惑った記憶のある方はきっと多いでしょう。人は見ているようで、見ていないものです。あんなに親しく長い時間を過ごしたはずなのに、よく知るあの人の顔が自信をもって描けないのです。また、少し見ただけで、すぐ知った気になってしまいます。

 白紙の画用紙の前に立つと、恥ずかしいほどその事実が白日の下にさらされます。そして鉛筆の実直さが、当人の戸惑いや無知を疑いようもなく明らかにするのです。

 しかし、絵を描くことはこの真実からスタートします。出発地点で謙虚になるのもよし。「だからなんだ」と偉そうにふるまうのもよし。開拓者のように楽しむのもよし。「描けない」ということは探求のはじまりです。つまり「まだ知らない」という素晴らしい事実に気がつくきっかけです。「描けない」ことに喜び、対象に「ハジメマシテ」と向き合ってみましょう。

美術の進路相談

<第5回に続く>

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