アンデルセン『赤い靴』あらすじ紹介。赤い靴に魅せられた少女の悲劇。両足を切断されたその後は…

文芸・カルチャー

公開日:2023/10/29

赤い靴』という作品を知っていますか? 赤い靴は、デンマークの童話作家であるアンデルセンの作品のなかでも特によく知られている作品のひとつで、『マッチ売りの少女』や『みにくいアヒルの子』などの作品とほぼ同時期に書かれた作品です。

 本稿では、アンデルセン『赤い靴』について、作品の解説と登場人物、あらすじをご紹介します。

赤い靴

『赤い靴』の作品解説

『赤い靴』は、デンマークの童話作家であるハンス・クリスチャン・アンデルセンが1845年に刊行した童話集に収録されたことで世に出ました。自分を養ってくれた老婦人が死の床にいる際も、赤い靴を履いて舞踏会に出かけた主人公カーレンが、赤い靴で踊り続けなければならない呪いをかけられ、足を失い、懺悔の祈りをして天に召されるまでを描いた作品です。

 悲劇的かつ教訓的な物語で、アンデルセンの童話のなかでも有名な作品のひとつです。

『赤い靴』の主な登場人物

カーレン:本作の主人公。母の葬儀の際に出会った老婦人に引き取られる。

お母さん:カーレンの母。貧しく、病気に苦しみ、やがて死んでしまう。

奥様:母の葬儀の際に赤い靴を履いていたカーレンを見て、のちにカーレンを養女にする老婦人。

『赤い靴』のあらすじ​​

 ある町にカーレンという女の子がいました。カーレンの家は靴も満足に買えないくらい貧しく、夏は裸足で、冬は木靴を履いていて、足は真っ赤になっていました。それを可哀想に思った靴屋のおかみさんが、カーレンに赤い布でできた靴を作ってあげましたが、届いたのはお母さんが亡くなったときでした。

 赤い靴を履いて葬式に参列するカーレンを見て、不憫に思ったお金持ちの奥様がカーレンを引き取って育てることになりました。奥様はカーレンにきちんとした服と靴、さらに教育を受けさせました。

 やがてカーレンは美しい娘に成長しました。ある日、教会に行くために新しい靴を買ってもらうことになりました。靴屋さんに置かれていた、とても綺麗な赤い靴をカーレンは欲しがりましたが、奥様は目が悪くて赤い靴だと気づきません。カーレンは赤い靴を買い、それを履いて教会に行きました。

 赤い靴を履いて教会に行ったカーレンを見て、人々は驚きました。お祈りをすることも忘れて、カーレンは赤い靴のことを考えていました。やがて奥様に赤い靴のことを知られてしまい、「教会へは黒い靴を履いていかないといけませんよ」と奥様はカーレンを叱りましたが、カーレンは次の日曜日も赤い靴を履いて教会へ行きました。

 教会の出口には松葉杖をついた兵隊のおじいさんがいて、おじいさんが赤い靴に話しかけた途端、カーレンの足は急に踊りだしてしまいました。そのときは、助けを求めるカーレンをみんなで押さえつけて、靴を脱がせることでようやく足は止まりました。

 ある日のこと、奥様は重い病気にかかってしまい、看病をしていたカーレンでしたが、奥様のそばでも赤い靴のことを考えていました。カーレンはほんの少しだけ、赤い靴を履いてみることにしました。するとその途端、カーレンの足はこの前のようにひとりでに踊りだし、町の外の暗い森のなかに迷い込みました。

 森のなかにはあの兵隊のおじいさんがいました。カーレンは靴を脱ごうとしましたが、ぴったりと足にくっついて脱げません。カーレンは日がな一日、晴れの日も雨の日も踊り続けなければなりませんでした。なんとか奥様の家まで戻ったカーレンは、奥様の遺体を収めた棺を目にします。奥様の死を知っても、踊り続ける足を止められません。

 カーレンは、森の外れの一軒家にたどり着きました。カーレンは、靴ごと両足を斧で切り落としてほしい、と家に住む男に嘆願しました。男は両足を切り落とすと、カーレンのために木の義足と杖を作ってくれました。

 カーレンは今までの自分の行いを神に懺悔し、教会の牧師さまのお手伝いを毎日しました。ある日曜日、一人で神さまに祈っていたカーレンは、バラの花を持った天使に導かれて天国へ昇っていきました。

『赤い靴』の教訓・感想​​

 モノの価値よりももっと大切なことがあるということを、アンデルセンは言いたかったのかもしれません。大切にしてくれた奥様に対する恩を忘れなかったのなら、カーレンは呪いにかけられずに済んだのかもしれませんね。

<第43回に続く>

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