小学生の時に埋めたタイムカプセル。30年経って掘り出すことになり校庭に行ってみると…/3分間ミステリー 十の鍵①

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/26

かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』(和智正喜:著、りたお:イラスト/ポプラ社)第1回【全5回】

短編のミステリー物語。じっくり深読みをして、本当の“かくされた意味”にたどり着けるか? 物語に潜むトリックが人気の短編物語『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ第10弾。今回はサブタイトルの「十の鍵」に秘密が隠されている⁉ 物語を読めば、シリーズ初のトリックに誰もが驚愕すること間違いなし。物語の考察が済んだら解説ページで答え合わせができるため、深読みが苦手な人にもライトに読み進められます。1話3分ほどで読める『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』の“不思議な世界”をお楽しみください。

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かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』(和智正喜:著、りたお:イラスト/ポプラ社)

三十年後に出てきたもの

 早いもので、小学校を卒業してから三十年がたった。

 

 あの頃は子どもだったけど、気づけば自分が子どもの親になってしまった。

 そんなわたしのところに知らせがあった。

 卒業から三十年を記念して、小学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘りだすのだという。

 タイムカプセルというのは、なにかの記念で、さまざまなものを金属のカプセルに入れて、将来、掘りだして開けるためのものだ。わたしは作文を入れたはずだ。

 あの頃、わたしは船乗りになりたかった。だから、

「どんな嵐の中でも、海を渡って、遠くへ行く」

 そんな勇ましい作文を書いたような気がする。ほかのみんなは未来の自分にあてた手紙だったり、家族の写真だったり、自分の顔を描いた絵を入れたりしたはずだ。

 そんなわけで、わたしは週末のある日、卒業した小学校へ行った。

 直前に用事ができて、少しおくれたわたしは、まず、教室へ向かった。

 そこには、なつかしい顔がたくさんあった。みんな、おじさん、おばさんになってしまったけど、少し話しているうちに、誰が誰かはすぐにわかった。

 みんなで盛りあがっていると、誰かが村川君という子の話をしてきた。

 わたしは、その名前に覚えがなかった。

「村川君? 誰だっけ?」

 わたしがたずねると、近くにいた元クラスメートが、村川君も写っている、昔の写真を見せてくれた。

 運動会のときのものか。日焼けした顔に太い眉毛、元気よく明るい笑顔だ。

 だが、その写真を見ても、わたしはどうしても思いだすことができなかった。

「いつもふざけてた」「すごいイタズラ好きの」「体育は得意だったよね」

 そんなふうに何人かが教えてくれたが、やはり思いだせない。

 そして、村川君について、みんなは奇妙なことを言っていた。

 村川君は卒業の直前、急に姿を消してしまったというのだ。

「転校したとかじゃなくて?」

 わたしはそう言ったが、「でも、なんのあいさつもなかったんだ」「不思議な話なんだよ」と、みんな、首をかしげた。

 そうしているうちに、教室に連絡があった。小さなクレーン車を使っての作業が終わって、タイムカプセルが地上に出てきたという。

 

 わたしたちは校庭のはずれに向かった。

 そこに置かれたタイムカプセルを見て、わたしはおどろいた。

 予想外というか、記憶とちがって、それはかなり大きかったからだ。銀色の丸いカプセルで、直径は二メートルくらいあった。大人だって入れそうな大きさだ。

「開ける準備をしよう」

 何人かがタイムカプセルに群がるようにして、真ん中で留めているボルトをゆるめていった。

「よし、開けるぞ。気をつけてな。一、二、三っ!」

 タイムカプセルが左右にぱかっと割れた。

 カプセルの中身を見て、それを開いた連中が、まるで凍りついたように、動かなくなっていた。

「ん……?」

 嫌な予感がしたものの、わたしは引っぱられるようにして、カプセルの前に立った。

 そんなわたしの前に、カプセルの中から飛びだしてきた影があった。

 

「……ボクまで埋めちゃうなんてひどいよー」

 

 カプセルから出てきたのは、三十年前に急にいなくなってしまったという、あの村川君だった。

 わたしは「ぎゃぁぁぁぁぁっ」と悲鳴をあげた。

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