吉原に暮らす少年少女の淡い恋物語――樋口一葉『たけくらべ』

文芸・カルチャー

2018/7/4

『にごりえ・たけくらべ (新潮文庫)』(樋口一葉/新潮社)

 吉原に住む14歳の勝気でおてんばな少女美登利(みどり)は遊女の姉を持ち、自身もゆくゆくは遊女となることが決まっている。弟分のような存在の正太郎という少年とよく遊んでいた美登利だが、心の中では寺の息子である信如(のぶゆき)のことが気になっていた。

 運動会の日、木の根につまずいた信如に美登利がハンカチを差し出したところ、他の生徒たちから冷やかされてしまう。変な噂が立つことを嫌った信如は美登利を無視するようになり、悲しく思った美登利も信如に対して冷たい態度を取るようになった。

 ある雨の日、信如は美登利の家の前で下駄が壊れて困っていた。美登利は身を隠して補修用の布切れを投げてやったが、信如は恥ずかしさからその好意を無視してしまう。

 そんな中、美登利は頭を島田髪に変えられる。これは、彼女が大人になり吉原の遊女となる日が近づいていることを意味した。美しく着飾った美登利に正太郎が声をかけるが、彼女は悲しげな様子で「大人になることは嫌なこと、なぜこのように歳を取ってしまうの…」と、彼を拒絶する。それ以降、美登利は他の子供とも遊ばなくなり、引きこもりがちになる。

 ある朝、美登利の家の門に水仙の造花が差し込まれていた。これを見て彼女はなぜだか懐かしく、少し物寂しい気分になり、それを部屋に飾る。

 後になって分かったことだが、それは信如が僧侶の学校に入るために吉原を旅立つ前日のことだった。

文=K(稲)