「近頃の若者は言い訳が多くて困る」の心理メカニズムとは? 【ビジネスにすぐ効く心理学】連載第3回

ビジネス

公開日:2018/12/18

『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)

 仕事そのものは嫌いじゃないけど、職場の人間関係や、お客さんとのやり取りが億劫で、会社に通う足取りが重くなる…。そういう気分になったことはありませんか? ビジネスでも中心となって動いているのは人間ですから、そこにはいろいろな心の働きが絡み合います。実際にビジネス分野で急速に“心理学”の存在感が増しています。

「ちょっと理屈っぽい?」と思っていた心理学を、ビジネスでの「あるある」な場面に重ね合わせてわかりやすく解説してくれるのが『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)です。本書から、あなたが今すぐ役立てられそうなトピックをご紹介します。

■自分のイメージを守るための印象操作【防衛的自己呈示】

「近頃の若手は言い訳が多くて困る」といった嘆きを聞いたり呟いたりした方は多いのではないでしょうか? 誰にでも自己防衛の心理があるので大なり小なり日常的に言い訳はしているはずですが、その心理メカニズムを知っておくと受け答えの仕方がぐっと変わってきそうです。

「自分がこう見られたい」という印象操作や調整することを自己呈示といいます。その中で、ネガティブな印象をもたれてしまう可能性があるときにそれを避けようとして行うのが、「防衛的自己呈示」です(本書132ページ)。

「そんなつもりはなかったんです(意図の否定)」
「山田課長に指示されたので…(自由意志の否定)」
「忙しかったので細かくチェックできなかったんです(状況要因の否定)」

 防衛的自己呈示の言い訳にはいろいろありますが、人間は危機的状況では自己防衛に走る生き物だと冷静に捉えておいたほうがいいかもしれません。日本では、自己弁護に拘泥する人間を「見苦しい」と受け取る空気がありますが、もし自分が上司や先輩であれば、「ミスがどういう状況で起こったのか」「ミスの背景には何があったのか」を把握しておく必要もあります。「言い訳はするな」と頭ごなしに否定するのではなく、現状把握のために言い訳にも耳を傾けることが必要な場面もあります。そういった姿勢が、部下にとって自己防衛の心理を和らげることになれば、結果的に「見苦しい言い訳」は減ることにつながりそうですね。

 本書は、ビジネスだけではなく生活の折々でも気になる心理学の基本と、それを活かした実践的ヒントを紹介します。心理学の正しい知識は、ビジネスや仕事であなたの武器となり、疲れた心にはそっと寄り添ってくれるもの。本書のページをめくって、そんな心強い相棒を得てみませんか。

文=田坂文