「伸びる新人は、上司をあれこれ評価しない」『伸びる新人は「これ」をやらない!』③

ビジネス

2019/9/19

 近年のマネジメント論の主流を、真っ向否定するスーパードライなマネジメント手法「識学」に則った新入社員のための仕事術本です。

『伸びる新人は「これ」をやらない!』(冨樫篤史:著、安藤広大:監修/すばる舎)

\よくある誤解/
「ウチの部署の上司は、結論はしっかりいうけど、どこか言葉足らず。誤解されやすいタイプだよね」
「君の部署の上司はどう? ボクは正直、『自分よりデキのよくない上司』の下にはいたくない。これはボク一人の意見じゃなくて、新人は皆同じ気持ちだよね」

■新人のあなたは、上司を評価する立場にはない

「あの上司は優柔不断すぎるよ」
「お前のところの上司は、意思決定が適切だよな」

 私にも経験がありますが、新人は、とかく自分の直属の上司が優秀であるかどうか、また仕事が速いかどうか、責任感をもって仕事をしているかどうかなどについて、評価をしがちです。

 ところで、いっとき「新卒配属ガチャ」という言葉が話題になりました。新卒で入社して配属される部署の上司がどんな人になるかを、ソーシャルゲームのコア機能である「課金ガチャ」になぞらえたものです。「ガチャでいい上司を引いた」「新卒配属ガチャでイマイチな上司を引いてしまった」などと使うようです。新人は配属が決まると、自分では選べない直属の上司の能力によって、自分の成長や将来がある程度決まってしまう――という意味でしょうか。

 確かに、同期の同僚の上司のほうが、自分の配属された部署の上司よりも魅力的に見えたりすれば、新人が上司の悪口をいいたくなる気持ちもわからないではありません。新人の頃、私自身にも同様の気持ちがありました。

 しかし、はっきりいうと、新人の皆さんは自分の上司を評価する立場にはなく、評価している場合でもないのです。

■意識が外に向いていると、成長できない

 なぜ、新人の皆さんは自分の上司を評価している場合ではないのか? それは、自分の上司を評価する新人は、その評価をしている間、本来するべき成長が確実に停止してしまうからです。

 新人が上司を評価しはじめると、新人がもつべき「自分の足りないところを知る」という機能がシャットアウトされます。

 上司を評価する思考状態で仕事をしている間は、意識は自分の責任には向かず、上司という外部環境のほうに向いています。その間、「自分の不足を知り、成長につなげる」という機能が発揮されず、成長できなくなってしまうのです。

 まだ熟練の域にはほど遠い皆さんが会社からのリターンを最大化するには、成長するしかありません。しかし、評価する側にい続けようとする思考があると、自分の不足を知り、成長につなげるという「成長」の機能が大きくそがれてしまうのです。

■チームの結果責任は誰にある?

 責任と権限という視点からも、この問題を考えてみましょう。

 仮に、あまりデキのよくない上司がいたとして、その上司が率いるチームが負けたとき、そのチームにいる部下の評価は下がるでしょうか? 一つの例外を除いて、部下の評価が下がることはありません。その例外とは、部下が上司に反発し、その上司に従わなかったときです。この場合は、部下が上司に従わず、いわば勝手にやって失敗したのですから、その部下の評価が下がって当然でしょう。しかしそれ以外のケースでは、チームが負けたときの責任は、すべて上司が負うというのが「組織」のルールです。

 そうした「結果責任」を負う上司を、新人が評価してよいかどうかは明らかですよね。

「評価してよい」という答えはあり得ません。責任を負う者に権限がある―この責任と権限の原則から考えて、チームの結果責任を負っている上司にこそ、チームの方針やルールを設定し、それに基づいて評価を行う権限が与えられているのです。

 逆に、チーム全体の責任を負わない部下には、上司の意思決定を評価する権限はないということです。

 加えて、多くの場合、部下の立場では上司の指示が正しいかどうかを判断できません。そもそも部下・新人は、上司を正しく評価するための材料(知識や経験)をもちあわせていないからです。上司の指示を評価するだけのリテラシーがないともいえます。

 こうした視点から考えても、やはり新人には上司を評価できず、するべきでもない、という結論が導かれます。

■好き嫌いの評価もただのロスタイム

 新人が行う上司についての評価では、その実力や能力ではなく、いわゆる好き嫌いに関する部分での評価もあるでしょう。単純に「うっとうしい」とか、「雰囲気がイヤだ、嫌い」「えこひいきする」といった評価です。

 これらの好き嫌いに関する評価については、上司に対する感情を、業務にもち込むことによって生じるデメリットをよく理解しておくべきでしょう。負の感情によって集中力が散漫になっている時間を積み重ねると、その時間の累積は大きなロスタイムとなって、あなたの成長や生産性に悪影響を与える、というデメリットです。

 ただし、単純な好き嫌いではなく、その感情が生じる理由にいわゆるハラスメントの類が入っている場合は例外です。

 新人は直属の上司の指示に従い、全力で上司からの評価を獲得しなければならない立場にあり、上司はさらに上の立場、自分の上司からの評価を獲得するために、責任をもって新人に指示を出さなければならない立場です。

 ところが、その関係を踏み外し、上司が新人に対してパワハラやセクハラを行ったときには、新人はそれでも上司の評価を獲得しなければならないのでしょうか? その答えは、明らかに「否」です。

 そういう場合には、社内のしかるべき部署に速やかに通報し、対応してもらわなければなりません。

■自分より能力が低い上司の下に配属されたら?

 ところで、新人の皆さんの気持ちとしては「自分より能力が低いと思えるような上司の下では働きたくない」といった素朴な気持ちもあるかもしれません。しかしその場合でも、その会社の新人である限りは、「自分より能力が低いと思えるような上司」からの評価を獲得するよう、全力を尽くすことが大切です。

 いま、この瞬間には、その「自分より能力が低いと思えるような人」があなたの上司なのです。これは逃れようのない事実です。

 もし、そうした実力差が本当にあるとしても、そのときには、新人は上司から「私より、はるかに優秀だ」と最高レベルの評価を獲得できるよう全力を尽くすことが重要です。新人として、上司から圧倒的に高い評価を得られるようがんばりましょう!

 なお、新人が上司に対して「自分より能力が劣る」と考える原因が、「上司の指示があいまい」「思いつきで評価が変わる」といったことであれば、新人としては、上司が「いま何を求めているのか」「いつまでに何をしてほしいと思っているのか」を自分から確認しにいくことが、高い評価を獲得するためのコツとなるはずです。

■役職の高低と、経験・知識・能力が比例するとは限らない

 新人が上司を評価してしまう思考の根底には、上司はあらゆるテーマで「自分の知識・経験を上回っていなければならない」、もしくは「上回っている人が上司であるべきだ」という〝先入観〟が根強くあるのかもしれません。

 しかし、これは大きな誤りです。この考えが本当に正しければ、たとえば「経理や財務に関する知識・技能では社長を上回っている経理財務部長は、経理財務部長ではなく社長という役職にあるべきである」といったおかしなことになってしまいます。

 会社を枠組みとして捉えると、その枠組みのなかで、新人のほうが上司より頭がよく能力が高いという状況はいくらでもあり得ます。しかし、だからといって部下が上司を評価したり軽んじたりするのはルール違反である、ということを理解しておきましょう。

この対応が正しい
 上司についてグチをいいたくなることはあります。しかし、上司を評価していると成長の機会を失うと感じました。上司と私とでは、もっている情報や経験が異なりますし、好き嫌いを論じている時間はロスタイムですね。上司についてあれこれいうことの無意味さを理解しました。

<第4回に続く>