江戸川乱歩の初恋は男の子、BL作品顔負けの小説を書く/『文豪どうかしてる逸話集』⑥

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/14

BL作品顔負けの小説を書いた江戸川乱歩、初恋の相手は男の子だった。

 主人公の男ふたりが「嫌いにならないで」「この気持ちをわかっていてくれるだけでいい」と本筋そっちのけでいちゃいちゃする元祖ボーイズラブ『孤島の鬼』を書き、古本屋で男色文献を買い漁っては同好の友人と「こんないい本あったよ!」「こっちはこんなすごいの見つけたよ!」と報告し合い、ゲイバーにも足繁く通っていた乱歩の初恋は15歳の頃だそう。

 乱歩曰く、

「まあ初恋といっていいのは、十五歳(かぞえ年)の時でした。中学二年です。お惚気(のろけ)じゃありません。相手は女じゃないのだから。それが実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観があるのです。ラブレターの交換や、手を握り合えば熱がして、身体が震え出したものです」

 現場からは以上です。

(出典) 江戸川乱歩『乱歩打明け話』

人間嫌いだった江戸川乱歩、人嫌いを克服する。

 小さい頃から人嫌いで、学校にもあまり行かなかった乱歩。

「学校は地獄であった」と言い、「会話を好まず独りで物を考える、よくいえば思索癖、悪くいえば妄想癖が幼年時代からあり、大人になってもそれがなおらなかった」「たとえ、どんな素晴らしいものでも二度とこの世に生れ替って来るのはごめんです」とまで言った、厭世観たっぷりの乱歩。

 そんな人嫌いの乱歩は、ある日、町内会で「昼間ひまそうだから」という理由で防災訓練長に任命される。

 当初は困惑していた乱歩だったが、防災訓練もやってみるとなんだかだんだん楽しくなってきて、童心に返ったような気持ちで活発に活動していると、町会長の目にとまり、「君やる気あるねぇ~」と気に入られて町会役員に抜擢され、さらに翌年には町会副会長にまで出世。気づいたら若い衆を引き連れて飲み歩くようになり、パンパンに膨れ上がった財布を使い果たすまで帰らないので「江戸川乱費」ってあだ名までつけられ、すっかり人間大好きに。

(出典) 江戸川乱歩『探偵小説四十年』

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