「Arakawa River」の表記が「川+川」と重複しても正しい理由 /日本人の9割が知らずに使っている日本語③

文芸・カルチャー

公開日:2020/2/5

ウソをつくなというとき、なぜ「ウソいえ!」と反対にいうの?
…外国人にそう聞かれたら、日本人としてきちんと答えられますか。いわれてみると確かに疑問だらけの「いつもの日本語」を再発見してみましょう!
雑学・豆知識としても役立つトピックを『日本人の9割が知らずに使っている日本語』(岩田亮子/青春出版社)から紹介します。

淀川のローマ字表記は「Yodo River」なのに 荒川はどうして「Arakawa River」になる?


 外国人向けに観光地の名称がローマ字や英語で表記されているのを目にして、「あれっ?」と思ったことはありませんか。例えば、利根川は「Tone River」で、京都の淀川は「Yodo River」なのに、荒川は「Ara River」ではなく、「Arakawa River」で、「荒川」の「川」と「River」が重複しています。なぜでしょうか。

 地名のローマ字や英語の表記にはルールがあります。国土地理院によると、「富士山」を「Mt.Fuji」と記すように、山や川、湖などの「地形や種別を表す部分」を英語に置き換え、「富士」のように固有名詞をローマ字で記す「置換(ちかん)方式」が原則です。だから、利根川は「Tone River」で、京都の淀川は「Yodo River」です。

 ただし、国土地理院では2016年に、「外国人にわかりやすい地図表現検討会」の報告書を発表しています。その中で、先述の置換方式を原則としつつも、荒川のように「Ara River」と書いてしまうと、「荒川」と認識しにくくなる場合には、「Arakawa」とローマ字で表記し、そこに「地形や種別を表す部分」を英語にして追加する「追加方式」が取り入れられました。アルペンルートで知られる立山も、「Mt.Tate」ではわかりにくいので、「Mt.Tateyama」です。

 ちなみに、外国人の生徒さんに「レイクゥアーシ ニ 行キマシタ」と言われて、どこかわからなかったことがあります。これは箱根の「芦ノ湖」のこと。国土地理院の表記でも箱根町のホームページでも「Lake Ashinoko」ですが、芦ノ湖のほとりの看板には「Lake Ashi」と書いてあったのです。

 東京の多摩川も、国土地理院では「Tama River」ですが、流域の自治体によって「Tama River」と「Tamagawa River」の両方の表記が使われています。




【次回に続く】