【宇垣美里・愛しのショコラ】チョコレートを食べる理由/第12回(最終回)

小説・エッセイ

更新日:2021/1/15

 ショコラマカロンにザッハトルテ、ブラウニーにガトーショコラ、エクレア、ホワイトチョコレート、チョコクッキー、トリュフ、チョコレートドーナツ、チョコタルト……ああ、チョコレートと一口に言っても、いっぱいあってきりがない。とてもじゃないけどひとつになんて、絞れない。

宇垣美里・愛しのショコラ

 決めきれないということは、きっと、私まだ死にきれないということだろう。
 最後のショコラを選ぶということ、それは言うなれば生きざまを選ぶに等しい。ここまでどう生きてきたか、そしてどう死んでいくのかを自ら定義づけるようなその行為。

 でも、なんとなくだけれど、きっと普通のチョコレートを選ぶのだと思っている。
 私にとっての普通のチョコレートとは、混じりけのないショコラブラウン、チョコレートの色をしていて、優しい甘さで、カカオの香りがしっかりとあって、舌の上で滑らかにゆっくりと溶けて、食べるだけでほぅっと力が抜けるように心が癒される、そんなチョコレート。おしゃれすぎる必要なんてなくて、奇抜な味も求めてない。カカオ以外の香りがするものなんて、もってのほか!ただ愛と平和がぎゅっとつまった、普通で素敵で、私にとって特別な一品。それさえ見つかれば、もう地球が割れようが、明日、世界が滅びようが、怖い物なんてない。

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 今日も今日とて、有名店の高級なものからスーパーで売ってるあの国民的な一品まで、ありとあらゆるチョコレートと名のつくものを、気が済むまで口にする。食べて、嗅いで、味わった末に、いつか自分にとって特別なチョコレートに出会えると信じて。その過程で幸せになれたとしたら、それに勝ることなどない。

※「愛しのショコラ」は今回で最終回になります。ご愛読ありがとうございました。

【筆者プロフィール】
宇垣美里(うがき・みさと)
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。チョコレートのほか、無類の旅好き、コスメ好きとしても知られる。週刊誌、WEBサイトでコラムやエッセイなど多数連載中。自身初の美容本「宇垣美里のコスメ愛 BEAUTY BOOK」が発売中。

撮影=中村和孝(まきうらオフィス)/ヘアメイク=AYA(LA DONNA)/スタイリスト=小川未久(宇垣さん衣装)、片野坂圭子(雑貨)/編集協力=千葉由知(ribelo visualworks)

衣装協力=moil(リング/info.il.moil@gmail.com)