目の前のこと/富田美憂の「私が私を見つけるまで」㉔

アニメ

公開日:2021/8/22

富田美憂の「私が私を見つけるまで」
イラスト:富田美憂

今回は原点回帰ということで、しばらくアーティストとしての話が続いていたので、お芝居の話をさせてください。

数年前に比べ、有難いことにオーディションで合格をいただく機会が格段に増えました。

これはきっと職業病だと思うんですけど、私は定期的にマネージャーさんから「受かったよ」という言葉を聞かないと怖くなってしまいます。
どんなにSNSのフォロワーが多くても、人気があっても、調子が良くても、オーディションに合格しなければ仕事は無くなっていきます。

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「これ以降受からなかったらどうしよう」が頭をぐるぐるするんです。

こういう考えだった頃は、正直毎日しんどかったです。

数年前、この相談をさせていただいた声優さんが1人だけいて、その方は「私もそれ、すごく思うよ!」と話してくれたんですけど、そのとき初めて「こんなすごい方でも私と同じことを思ってるんだ」と思って。

私は一体何を焦っていたんだろう、と。
なんだかすごく小さいことで悩んでいたんだなぁって、気づかせてもらえたんです。

「受からなきゃ」「期待に応えなきゃ」より大切なことは「今頂いているお仕事を100点で返す」ということなんだと、そんな当たり前のことに、そのときやっと気づいたんです。
今思うと「なんでこんなことで悩んで苦しくなってたの」って笑っちゃうんですけど、
この気持ちに気づいてから、有難いことに自然とお仕事をいただけるようになりました。

仕事しなきゃ、どうしよう、とか焦る気持ちより、お芝居が好きで、楽しくて、無我夢中で取り組むことが1番大事だったんです。
だから今は、焦りとかは全くないです。

毎日の現場に全力で取り組んで、誰よりも努力するぞっていう気持ちと、スタッフの皆さんや共演者の皆さん、マネージャーさん、関わる全ての方への感謝の気持ちを忘れないことが、きっと次に繋がるんだ、と。

以前YouTubeでの質問企画で「ライバルはとくにいないです」と答えたのもこれに紐づいて言えることで、この世界には声優さんはたくさんいるけど、富田美憂は富田美憂、なので。
世の中には私たちを同じ土俵に乗せて比べたがる人もいると思うのですが、私は気にしません。
だって人は人なんです。だから、ライバルはいないですって言ったんです。
私は私で楽しいから。

尊敬してる方はたーくさんいますよ!
でもその人に勝ちたいとかは微塵も思ってないです。
誰かと競うよりも、自分の技術を磨くことが「仕事」だと思っているので。

まだ21歳のやつが何を偉そうに仕事語ってんだよ!って思われるかもしれないですが、
これが私の人生における答えの1つです。