免疫を低下させる7つのきっかけ。免疫を強く保つには?/病気にならない体をつくる こども免疫教室②

健康・美容

公開日:2021/11/17

「免疫は高ければいい」というわけでもない

病気にならない体をつくる こども免疫教室

病気にならない体をつくる こども免疫教室

免疫細胞って、悪者をやっつけててスゴいんだね。どんどん悪者をこらしめてほしいなー。

病気にならない体をつくる こども免疫教室

ただ、免疫システムが働きすぎてしまうのも困りものなの。免疫細胞の攻撃が、私たちの体に負担をかけて、逆に病気になってしまうこともあるのよ。「ほどほど」が大切なの。

免疫細胞が正常な細胞まで攻撃してしまうことも

 体の中に入った悪者を撃退するべく最初に働くのが、私たちが生まれながらに持っている「自然免疫」です。

 しかし、自然免疫をかいくぐる手強い敵もいます。このとき、活躍するのが「獲得免疫」。血液中の白血球にあるリンパ球(T細胞、B細胞など)です。

 悪者には、いなくなってほしいもの。ただ、悪者への攻撃を続けていると、戦場である体にはそれなりの負担がかかります。そこで活躍するのがT細胞です。T細胞は、免疫細胞がいきすぎた攻撃を続け、体に過度な負担がかからないよう見張っています。

 ただ、なんらかの原因で、T細胞のコントロールが機能しなくなることもあります。こうなると、免疫細胞は過剰に反応してしまい、病原菌におかされていない正常な細胞、つまり、味方にまで攻撃をはじめてしまうことさえあります。これを「免疫の暴走」といいます。

 花粉症やアトピー性皮膚炎などは、免疫が過剰に反応して起こります。新型コロナの重症化にも免疫の暴走が関係しているといわれます。

白血球のバランスが乱れると問題が起こりやすい

 なぜ免疫の暴走が起こるのかは、まだはっきりとわかっていません。ここでは世界的な免疫学者・安保徹先生(1947-2016年)の考えを紹介しましょう。

 白血球の成分の平均的な割合は、顆粒球が約60%、リンパ球が約35%、マクロファージ約5%です。安保先生は、この割合を大きくはみ出たときに問題が起こりやすくなると考えました。具体的には、顆粒球が約70%と高いタイプを「顆粒球人間」、リンパ球が約40%と高いタイプを「リンパ球人間」と2タイプに分け、次ページのような傾向があるとしました。

 いずれも、かかりやすい病気には「免疫の暴走」が関係していると考えられています。

 顆粒球も、リンパ球も、多すぎても少なすぎてもダメで、ちょうどいいバランスのとき、免疫システムは正常に働きます。病原菌を倒すため、一時的に体内が戦場になるのは仕方のないことです。でも、ふつうに生活しているときに無意味に戦ってしまうと、体にダメージを与えてしまう──、そう安保先生は推察されました。

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顆粒球人間
やせ型で色黒、筋肉質、手際よくものごとを片づけ、決断が早い。いざというときに備えるため心身が緊張しやすく、胃潰瘍などの病気が起こりやすい。

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リンパ球人間
ふっくらした体型でのんびりしていて、決断は早くないが、なにかをやり続ける力がある。ただ、アトピー性皮膚炎や花粉症、気管支ぜんそくなどのアレルギー性の病気になりやすい傾向がある。

免疫の暴走の目安はリンパ球と好中球の割合

 病原菌が体内に侵入したとき、リンパ球と好中球の数値は大きく変化します。

 そして、好中球÷リンパ球比(NLRの値)が3を超えるほど、好中球が増えリンパ球が減ると、免疫の低下が指摘されています。新型コロナウイルス感染症などの感染症の診断では、このリンパ球と好中球の比率が、症状が悪くなるかどうかの目安になることもあります。

ちょっと詳しい話
新型コロナがやっかいなのははじめて経験するものだから

 2020年、それまでにない新しい病気、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」が世界中に広がりました。

 新型コロナは特別な病気ではありません。私たちにとってもっとも身近な病気である感染症のひとつです。

 感染症はウイルスや細菌など病原菌が体内に入って発生する病気のことで、カゼ、インフルエンザ、下痢、中耳炎、結膜炎、水虫などはすべて感染症です。

 カゼやインフルエンザにかかっても、高齢者以外で死亡するケースはとても珍しく、こわい病気ではありません。

 ところが、新型コロナは症状が悪化して“死”をもたらすことがあります。この違いは、ワクチンや治療薬もありますが、病原菌に対する免疫を持っているかどうかが大きく関係しています。カゼやインフルエンザはこれまでに経験したことがある病原菌なのに対し、新型コロナはこれまで経験したことのない新しい病原菌です。

 そのため、十分に対抗できる免疫が備わるまで時間がかかります。時間はかかりますが、やがてワクチンが行き渡り、治療法も確立し、新型コロナに対する免疫が備わってくれば、こわい病気とはいわれなくなるでしょう。

 実のところ、免疫システムが活発な小学生以下の子どもは、新型コロナになっても症状が軽かったり、そもそも症状が出なかったりして、ひどくなる確率は非常に低いといわれています。

<第3回に続く>

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