やるきげんきだいきさん(後編)/歌舞伎町モラトリアム④

エンタメ

公開日:2022/6/27

 自身もホストクラブに通いながらも、社会学として歌舞伎町を研究する佐々木チワワ。そんなチワワが歌舞伎町で活躍する様々な「エモい」ホストと対談し、現代のホストクラブについて語りつくす新連載、「歌舞伎町モラトリアム」。

やるきげんきだいき

 第2回は現在「FILIA(MIZUKI GROUP)」の代表を務めながら、YouTuber「ほすちる」としても活躍する月間3300万、年間1億4000万の売り上げを打ち立てたやるきげんきだいきさん。YouTuberとして、ホストとして、そしてお店の経営者としての様々な顔を取材しました。

 後編は歌舞伎町という街で「ホスト」として生きて消費をされるということ。SNS社会でのホストの在り方について、ホスト系YouTuberの先駆者であるだいきさん考えていきます。

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ホストとして「消費されていく」ということ

佐々木:ホストって、働く男の子も消費されていくじゃないですか。本営とか病み営(病んでいることを相手に伝える営業)って得意ならいいと思うけど、潰れるのも早いですよね。

だいき:その通り! そういうホストって、お客様には見せないけど、確実に裏で弱っていくんです。僕らからすると、(病んでいくのが)めっちゃ目に見えてわかる。例えば、売り上げが上がっていても、その一番使っている子に束縛されてるんだろうなとか、ずっと気を遣って毎日いろんなことを我慢しているんだろうなって思ったり。眠れないって話をしてたり……。あまりにも精神的に参っている場合は「切ったほうがいいよ」って言うようにしています。そういう状態の時って、そのホストにできることは全てやっているのに「もっと欲しい」と求められて、精神的に限界ギリギリまで疲れてる状態なので。目先の利益を追いすぎて、接客のパフォーマンスが落ちて未来のお客様を得られない方が、長い目でみるとマイナスが大きいなと思います。

佐々木:そう思うとホスト業界って、人材切り捨て方式から長期でいい男の子を育てる方式に変わりましたよね。消費のされ方が変わったなと。じゃあ、逆に女の子はどうしたらずっと継続的に楽しくお金を使い続けられるんでしょうか?

だいき:「嬉しいけど、飽きないかな?」って思うくらい1年間、営業日は毎日来てくださるお客様もいるんですよね。僕が心がけているのは、来てくださった時に必ず楽しませるということ。あとは、「飽きられてるな」と思ったら深追いしないことを大切にしています。

佐々木:あー、(笑)やってしまう。女の子側からすると、追っかけられるくらい大事なお客さんなのかを確かめたくなってしまうんですよ。その気持ちはとてもわかります。それも仕事だろ、とこっちから言うのは違うと思いますが。金使ってるんだから、スタンスの客って男女ともにどの業種でも好かれないですよね。

だいき:「金使ってるんだからもっと仕事しろよ」とか言われたら「なんでお前が勝手に使ってるのに俺が動かなきゃいけないの」ってなりますね。お店で楽しませることができていなくてそう言われた場合は、重く受け止めて改善しますが、「金使ってるんだから~」と言うお客様の場合は、店内での接客以外のことを求める場合が多いきがします。もちろん感謝はしています。でも、それに対してじゃあこう動こうとか、こうするよって決めてはいないので。

佐々木:ホストとして正解すぎて、意地悪な質問が何にもできない!(笑)お話ししていて、ホストって美術品と一緒だなと思いました。こっちが価値を感じて勝手に値札つけて、結果手に入るかはわからないわけで。主な営業方法やスタイルはあれど、同じホストを指名してても何に価値を感じているかは、それぞれ違うわけですから。

最近のホストの在り方

佐々木:FILIA(フィリア)はでも、歌舞伎町らしさは少ないですよね。キャストの方々がみんないい意味でホストっぽくないというか。

だいき:おかげさまで店売りはめちゃいいんですけど。従業員もYouTubeを見てくれて、入ってきている子が多いからかもしれません。若いしホストを動画でしか知らなくて。だからかな、純粋にお客様に接しているし、見ていると関係性がカワイイ(笑)。

佐々木:あー! いい! 初々しい源氏名くんになりきれていない男の子の葛藤もまた歌舞伎町のエモさですよね。

だいき:お客様もYouTubeを見てくださっている方も多くて。他店にバリバリ通ってた!みたいな方の比率が低いんです。

佐々木:もう歌舞伎町の全部の記憶消して初回で来たいです…。

だいき:ウチはめちゃくちゃ楽しいと思いますよ。自信あります!(笑)

佐々木:最近は外販よりもSNSでの評判をみて店に行くことが増えて。YouTubeもほかの店舗が増えてきたじゃないですか。そういうの見てて何か思うことはありますか?

だいき:ホストYouTuber業界に頑張ってほしい、っていうと上から言っているみたいになっちゃうんですが。でも正直に言って、今の動画は面白くないものが多いと思ってます。これがホストみんなの意見だよ! みたいに主語が大きいことを語られて、それでお客様が勘違いしちゃうのが嫌です。Twitterとかも、ホストってなぜかホストを落とすツイートをすることが多いんですよ。ホストは落としあうもの、みたいな古い価値観を持っている人もまだいて。そういうのはダサいし、そんな奴らには負ける気がしないです。

佐々木:ちなみにTwitterやってる女性客はどうですか?

だいき:俺は嫌ですね。怖い(笑)。炎上とか晒しじゃなくて、文章力ある子が多いから「こんなこと考えながら僕と接してるのか……」とかいろいろ勘ぐってしゃべりづらくなってしまう。

佐々木:確かにそうかも…。ハイリスクローリターン(笑)。仕事貰えているだけありがたいですが。ホストもでも自分の考えを発信できるTwitterは重要ですよね。外見もだけど価値観や人間性が指名に繋がりますから。

だいき:そうですね。僕、これから水商売はどんどん強くなると思っているんです。僕らの仕事って、絶対に機械化できないじゃないですか。どんどん身近なアイドル化していって廃れないんじゃないかな。

佐々木:アイドル化は感じますね。敷居が低くなって、手前はクリーンになったというか。

だいき:でも僕はホスト業界なんで完全にクリーンにならないし、ならなくていいとも思っています。町としてはある程度怖がられる要素がないと、みんなが安易に近づいてしまうから。

佐々木:ある程度の暗部があるからこそ、息ができる人たちも一定数いますからね。

だいきさんにとってホストとは

佐々木:だいきさんはほすちるとしてYouTubeをやっているのもあって歌舞伎町の外からみるとホストのスタンダードに見られそうですけど、話すといい意味でホストらしくないというか、歌舞伎町のホストらしさに拘らない印象を受けました。

だいき:常々動画でも言ってるんですが、ホストという職業に誇りを持ったことがないんですよ。この職業自体は本当にしょうもない奴も多いし、誇りを持てるような仕事でもない。誰でもなれるし。
ただ自分と関わった人は、従業員も女の子も全員自分と出会う前よりもいい状態で別れたいなと。精神的な問題ですけど、収入とかよりも、後悔しないで終わりたい。

だいき:ホストは常に「変化する職業」。その時代を読める奴が売れる。誰でもなれるからこそ、シンプルにそこが試される仕事なのかなと思います。

 

チワワのインタビュー後記

 ホストを美術品に例えましたが、わかりやすく売れているホストは誰もが価値を認めるので、結果「使った」資産価値はロレックスとか現物と一緒で残るのかなと思いました。だから「あの有名ホストに200万使った」とかが自慢になるのかなと。でも、そんなみんなが良いという美術品に、自分しか知らない特別な価値を感じてお金を使えたら尊いのかなとも。逆に「こんな男に高値を付けていたんだ…」という一面が見えると100年の恋も冷めたり。

 傷つくのが怖い自己防衛かもしれないけど、「どうせ客だし」や「こっちは客だぞ」という発言は、自分も相手も人として尊重していたらなかなか出てこない言葉。まずは自分を大切にしながら相手との関係をはぐくんでいきたいなと思えました。でもやっぱ記憶を全部消してフィリアに初回に行きたい…(笑)。

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佐々木チワワ(ささき・ちわわ)/2000年生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチをもとに「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。現在、初の書籍『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)が好評発売中。
Twitter:@chiwawa_sasaki