部下のやる気を引き出す効果的な方法は? 世界の一流から学ぶ「仕事の基本」

ライフスタイル

2017/4/7

『世界の一流36人「仕事の基本」』(戸塚隆将/講談社)

 一流の人は感性も一流である。例えば古くから偉人の名言集を集めた書籍は沢山ある。凡人が名言より得るインスピレーションが「1」だとすると、一流の人は「5」もしくは「10」をも思いを広げることができる。そのことをよく実感できるのが、戸塚隆将氏の著書『世界の一流36人「仕事の基本」』(講談社)である。

 戸塚氏はゴールドマン・サックス、マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤め、ハーバード経営大学院(HBS)でMBAを取得した人物だ。前作『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(講談社)で20万部を超えるヒットを放った。そんな戸塚氏の最新作は、世界の第一線で活躍する一流の人々の名言と彼らの仕事の仕方を集めたものだ。

 前作は著者が一流企業で働く上司や同僚から学び取った「仕事の基本」であるが、今作はその幅が広がった。金メダリストであるウサイン・ボルトから、サッカーのマンチェスター・ユナイテッドの元監督のアレックス・ファーガソン氏、スティーブ・ジョブズまで。ビジネスパーソンだけに絞らず、様々なジャンルの最前線で活躍している人選である。

■「株」から広がる「キャリア投資」という発想

 著者の感性の鋭さが反映されている人物に世界的に知られる投資家、ウォーレン・バフェット氏の言葉がある。彼は長期投資で知られていて、50年以上も前に、コカ・コーラ社や、アメリカン・エキスプレス社の株を取得している人物だ。

 そのバフェット氏の投資の指針を表す言葉がこれである。

私は投資した翌日から5年間は市場が閉鎖されると想定して投資判断をします

 つまり最低5年間は株を売らない。5年後の社会を見越して投資するということである。

 あなたはこの言葉から何を感じるだろうか。「5年先の社会を見通せるなんてすごい」だろうか。それが凡人だろう。しかし、戸塚氏はこの言葉から次のインスピレーションを得た。

「今後5年間を、私たちはどのように過ごすべきろうか」…
広い意味の「自己投資」にも「長期保有」というバフェット氏の哲学は有意義な示唆を与えてくれます

 たとえば転職を「キャリアの投資」と考えた場合。目先の給料アップよりも、5年後の見返りが上昇するようなキャリア形成をすべきであると。

 また自分のなかの「どんな分野」に投資すべきか。それを考える上でも「5年先」という視野は有益であると考えた。

「投資」という言葉をここまで広げられるだろうか。そして「自分事」として考えられるだろうか。こうした感性はぜひ見習いたいものである。

■部下、取引先に最大限のパフォーマンスを上げてもらう方法

 先の例は、長期的展望を与えてくれるものであるが、今すぐ行動に移せるアドバイスもこの本には満載してある。

 イギリスの名門サッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドの元監督のアレックス・ファーガソン氏のケースも紹介しよう。

期待は常に目の前にある

 抽象的な言葉であるが、これに対して戸塚氏は次のような解釈をしている。

君たちはサッカー界の超一流だ。皆が世界のトップレベルの力を備えている。だからこそ、世界が君たちにかけている期待は大きいということを忘れてはならない。自分の力を信じて、その大きな期待に応えなさい――。

 選手をただ褒めるのでは甘やかしだ。逆にプレッシャーだけを与えればストレスとなる。「期待」というプレッシャーを感じさせずに、ポジティブな「自信」という心持ちへ変換させるのだ。

 これはあなたの部下や取引先に最大限のパフォーマンスを上げてもらうために使える言葉だろう。プレッシャーだけではなく、「自信」もセットで与えるという交渉の仕方である。

 このように、今すぐ自身の仕事やプライベートでも活かせる数々の発想法がこの本には記されている。

 名言集といえば、座右の銘として心に留めるのも使い方の一つだ。けれどもそこで感心して終わってはいけない。大切なのは、心に響いた名言を自身の「行動」にいかに反映させるかである。

 今の自分から、一流の人物にどれほど近付けるか、著者は常にこのことを模索している。その模索はあなたにも大きなヒントとなりうるだろう。

文=武藤徉子