意外と知らない「偏差値」の正体とは? 社会人になったら学んでおきたい「経済数学」

学習

2017/4/6

『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(長沼伸一郎/ブルーバックス)

 暦は4月、待ちに待った新年度のスタートだ。新たな年度を迎えるにあたり気分も一新、という学生・社会人が多いはず。中でもこれから社会の荒波へと漕ぎ出す“新社会人”たちは、大きな期待と不安が入り混じっているに違いない。

 そんな“新社会人”諸君の中には、英会話を始めてみたり、パソコンスキルを磨いてみたりする志高い人もいるだろう。その中でも「社会人たるもの金融・経済を理解せねば」と経済学についての書籍を手に取る人もいる。これも私自身経験があるのだが、経済分野を本格的に学ぼうとすると、数学領域である“確率・統計”の壁にぶち当たってしまう。この壁は文系畑の住人にとっては非常に難敵。

 そんな少し取っ付きにくい「経済数学」の概要を説明し、金融工学の基本となる「ブラック・ショールズ理論」を理解しようというのが『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(長沼伸一郎/ブルーバックス)だ。

 この書籍は、ただ公式を丸暗記することに頼るのではなく、“確率・統計”とはどのようなものか、というアプローチをする一冊となっている。例えば、小学校で習った台形の面積。求め方は「(上底+下底)×高さ÷2」というもの。公式は覚えているけれども「なぜ、上底と下底を足すのか」「なぜ÷2が必要なのか」を知らないという人が多いという。ちなみに台形二つを重ねて、平行四辺形を作り、その平行四辺形の面積を求め、÷2をすると台形一つ分の面積というのが理由。「なぜ、そのようになるのか」という要点からアプローチしているのが本書の特徴と言えるだろう。それでは本書に記載されている、一部を以下に紹介したい。

 確率と聞くと、中学校で勉強した「サイコロの目」や「コインの表・裏」というイメージが浮かぶが、本書では確率・統計を“誤差”の観点から解説している。例えば、パン工場でパンを作る際に機械の故障などで、サイズが大きい(小さい)パンができてしまった、あるいは、気温によってサイズが変わってしまうなど、人の手で修正が可能な誤差。故障などはないが、様々な工程を経ることで、少しずつプラス・マイナスの重さの違いが生じる、人の手では修正不可能な誤差の二つがある。この人の手では調整できない、多段階を経るうちに生じる誤差を突き詰めたものが確率・統計論の基礎となっているそう。

 上記の理論から生まれた「正規分布曲線」を応用したものの一つが「偏差値」だ。高校入試や大学入試でこの「偏差値」に一喜一憂した人も多いハズだが、この数値がどんなものかを詳しく理解している人は少ないだろう。少なくとも本書を読む前の私は、全く知らなかったことを付け加えておく。テストであれば平均よりも+の誤差なら全体を通して出来が良く、-の誤差なら出来が悪かったということがわかるもの。ここで「標準偏差」というやっかいな敵が登場するのだが、図やグラフを用いた解説で数学には疎い私でも、大まかな理解に辿り着いた。原理・成り立ちを知ることができたので、納得しながら読み進めることができた印象だ。

 上記で紹介したのは、本書の「初級」内容のほんの一部。「ブラック・ショールズ理論」に触れる「中級」、理論を応用させた「上級」、理系で数字に苦手意識がない方はより詳しい理解が得られるだろう。数学がちょっと苦手…という方はゆっくり「初級」「中級」と無理なく理解して、経済数学の楽しさに触れてみるという読み方がおススメだ。

文=冴島友貴