学習まんがで楽しく読んで流れをつかめば、子どもは歴史が好きになる!

出産・子育て

2018/3/12

 入学シーズンを迎え、もうすぐ期待と不安で胸いっぱいの子どもたちの新生活がはじまる。親も我が子の成長に大きな喜びを感じながら、内心では「うちの子、大丈夫かな。勉強についていけるかしら? 友だちできるかしら?」と心配事は尽きない。特に新小学1年生は、国語、算数の授業がスタートする大事な時期。そして中学年になると社会や理科もはじまる…。

 さらに2020年度から小学校高学年で英語も成績の付く教科になり、中学年でも成績は付かないが必修科目となる。大学入試改革もはじまるこの転換期に、我が子が勉強を好きになってくれることを願わない親はいないだろう。

 ではどうすれば、子どもが勉強に興味を持つのだろうか? 家庭でどんな学習教材を与えれば、自ら学ぶ子どもに育つのだろう?

 そこで各教科で、子ども目線に立った人気学習教材、図鑑、漫画を作っている達人たちに、子どもを勉強好きにさせるヒントを伺った。

 社会といえば、いつの時代も子どもたちに人気なのが“歴史学習漫画”だ。なかでも最近は、『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』(全15巻)が、2015年6月の刊行開始から累計360万部を超える大ヒットとなっている。その人気の秘密は何なのか? 子どもを歴史好きにさせる工夫やこだわりとは? KADOKAWA文芸・ノンフィクション局の田島寛子編集長にお話を伺いました。

田島寛子編集長

――歴史漫画シリーズといえば、40年前からロングセラーの小学館の『学習まんが少年少女日本の歴史』シリーズが有名ですが、「角川まんが学習シリーズ」をあえて出そうと思われたのは?

田島編集長(以下、田島) 私が子どもの頃も学習漫画は読んでいましたし、周りにも読んでいる子どもたちはいました。でも当時から、確かによくできているけれど、絵が古くて文字ばっかりで、面白いかというとそうでもないと思っていたんですね。

 それに私自身、最初に触れた歴史の教科書や参考書が、まさに暗記のための内容だったので、歴史は年号と用語と人名の暗記科目だという印象が強くて、すごく苦手だったんです。

 自分が作るならそういうものではなく、普通に楽しいものから入ってもらえたら、歴史の捉え方自体、全然変わるんじゃないかなと思いました。だって、そもそも歴史というのは人間ドラマの積み重ねなんですから。

 そこで、弊社で学習漫画を出すことになったとき、子どもが自主的に読みたくなるような楽しい歴史漫画を作りたいと。絵も子どもが好きな今どきのタッチで、ストーリーも純粋に面白くて、繰り返し読みたくなる歴史漫画を作りたいと思ったんです。

――確かに従来の日本の学校教育は、歴史に限らず基本的に暗記型教育なので、勉強嫌いの人を大量生産してきたように思います(笑)。

田島 子どもって、ポケモンの名前とか電車の名前とか、自分が好きなものはすごい勢いで覚えるじゃないですか。好きに対する子どもの好奇心や集中力は、大人でも敵わないほど強いですし、いったん面白いと思ったら、放っておいても繰り返し読んでくれます。そうなれば、しめたもの(笑)。逆に、親から「これを覚えなさい。読みなさい。」と言われたことに対する反応は、まったく逆ですから(笑)。

 そんな子どもの好奇心と興味を惹きつけるために、「角川まんが学習シリーズ」で工夫している点がいくつかあります。

 まずひとつ目は、それぞれの巻に登場する歴史上の人物やその時代に暮らしている架空の家族の人物相関図を巻頭に入れています。二つ目は、その巻の時代背景や簡単な流れなど、特徴が一目でわかるカラーのイラストページ「絵で見る歴史ナビ」も入れていることです。

 その巻頭の数ページを読むことで、「ああ、こんな時代なんだな。こういう人たちが生きていて、こういうことがあったんだな」というざっくりしたポイントをまずつかんでもらうんです。

 このアイデアは、本シリーズ監修者で東京大学教授の山本博文先生のアドバイスをもとに生まれました。東大の入試は細かい歴史知識を問うのではなく、歴史の全体像を考えさせることを重視しているため、歴史の流れがわかっていないと解けないんですね。

 新学習指導要領でも、歴史を覚えるより、なぜそうなったかを考え理解するほうが大事になっていくので、それをふまえた本シリーズの工夫点を「東大流」と言っています。

――確かに、予備知識があるのとないのとでは、理解の早さも違いますし、これからはじまる物語に対するワクワク感も増しそうです。

田島 「東大流」のもうひとつの特徴は、事件や出来事の因果関係についてもわかりやすく説明している点です。時代こそ違えど、生きているのは私たちと変わらない人間です。彼らがどう感じ、何を考え、だからこの事件が起こって、その結果、世の中がどう変化していったのか。歴史をただ覚えるのではなく、正しく深く理解してほしい。そんな山本先生のこだわりが随所に反映されているのです。

――イラストも各巻、違う方が描いているんですね。

田島 それも画期的だと思います。歴史とひと口に言っても、貴族文化が栄えた華やかな平安時代から戦国時代まで、どの時代にも特徴がありますよね。ですからイラストも、その時代に合った画風の執筆陣に描いていただいています。

 たとえば、スタジオジブリの近藤勝也さん、『ケロロ軍曹』の吉崎観音さん、『DEATH NOTE』の小畑健さんなど、漫画家さんやアニメーターさん、児童文庫で人気シリーズを手がけるイラストレーターさんにも参加いただいています。

 カバーイラストだけ並べて見てもとても豪華ですから、まず、子どもたちの興味をひくのではないかと思います。それは自信があります(笑)。


――親も一緒になって読んでいる方が多そうです。

田島 シリーズ刊行がスタートした当初は、「親子で読んで、歴史について話す楽しい時間が増えた」という感想が目立ちました。昔、学校で習った歴史と変わっているところも結構ありますから、大人が読んでも新しい発見があると思います。

「子どもが楽しそうに繰り返し読んでいて、親よりも歴史に詳しくなりました」という感想もいただきます。ソフトカバーで、子どもも持ちやすいサイズもいいみたいですね。読み始めると続きが読みたくて、学校や外出先にも持ち歩いて読んでいるお子さんも多いようです。重いハードカバーの漫画だと、かさばりますからね。

――今年は、NHK大河ドラマで『西郷どん』が放映中で、西郷隆盛に興味を持つ小学生もいると思います。歴史上の人物に興味を持った子ども向けに『まんが人物伝』シリーズもありますね。

田島 歴史好きになるきっかけは何でもいいと思うんですね。学習まんがで通史を読んでいるうちに特定の人物に興味を持つこともあるでしょうし、テレビやアニメで知った歴史上の人物から入ることもあるでしょう。大事なのは自分から好きになるということですから。

――今年2月に、『日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史』(全3巻)も発売されました。

田島 これも、今までにない内容になっています。他の歴史漫画と比べると一目瞭然なんですが、日本国内の事件や出来事を軸に描くのではなく、世界各国とのつながりを重視しているんですね。戦争はなぜ起きたのか、世界の変化を受けて日本はどう変化してきたのか、日本史と世界史がひとつの流れですらすら読める内容になっています。

 すでに周知のとおり新しい学習指導要領の導入が2020年度よりスタートします。「歴史総合」という新しい必修科目の名前を耳にした人も多いでしょう。この科目のポイントは2つ、近現代史を重視している点と、日本史と世界史を融合して学ぶ点です。この春から小学6年生に上がる子どもたちが高校生になるタイミングでこの科目を学び、その知識をもって大学入試に臨むことになります。『日本の歴史』の近現代史をもっと強化してほしい、という保護者の方からの声も実際ありまして、そのニーズにこたえる形となりました。

 3巻には、トランプ大統領の誕生、平成の終わりなど、最新の出来事まで収録していますので、子どもたちもニュースで見聞きしたことのある内容が多く興味関心も高いのではないかと思います。

 たとえば、日本とロシアは、なぜ北方領土問題で揉めているの?と子どもに聞かれても、正しく答えられない親御さんがいるかもしれませんが、このまんがでは、その理由をとてもわかりやすく描いています。シリーズ全体を通して因果関係がきちんと理解できるよう描くことを重視しているので、歴史は難しいとか、覚えることが多いから苦手と思って腰が引けちゃうことはまずないんじゃないかなと思います。

 ただ、繰り返しになりますが、親が「読みなさい」と言って押しつけると子どもは嫌がりますので、リビングの本棚とかにさりげなく並べておいて、子どもが自然と手にとって読んでくれるのを待っていただくのが良いのではないでしょうか(笑)。

取材・文=樺山美夏



【『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』公式サイト】http://shoten.kadokawa.co.jp/sp/mangagakushu/nihonnorekishi/