なぜセックスの最中に笑ってはいけないのか? みうらじゅんと宮藤官九郎が世の中の“曖昧”を斬る!

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公開日:2018/7/29

みうらじゅん宮藤官九郎の世界全体会議』(みうらじゅん宮藤官九郎/集英社)

 なぜ男と女はわかりあえないか? ペニスはデカいほうがいいのか、そうでもないのか? 男女の友情は成立するのか? オッパイやオシリのチラ見は何秒まで許されるのか? ――考えれば考えるほど、性愛は謎めいている。

 みうらじゅん宮藤官九郎。日本サブカル界を代表するふたりが、世の中の“曖昧”に決着をつけるべく行った対談を収録した本『みうらじゅん宮藤官九郎の世界全体会議』(みうらじゅん宮藤官九郎/集英社)を本稿ではご紹介したい。両氏の交わすロマンチックで下世話な問答は、肩の力を抜いておもしろおかしく読み進められるが、同時に実に奥深い哲学も感じられる。

■なぜセックスの最中に笑ってはいけないのか?

 確かにセックスの最中は男も女も基本的にシリアスな態度で、笑わない。どうしてそうなるのか、という疑問に本書は切り込む。

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みうら・でも、セックスって実はものすごく滑稽なものじゃないですか。一心不乱に腰を振り続けてるマヌケさもそうだし、場合によっちゃ股間からオナラみたいにブッて音が鳴ったりするでしょ? あれ、普通に考えたら笑うトコだもん(笑)。

宮藤・見て見ぬフリがマナーですよね。なぜか笑うのは失礼なムードがある。(後略)

 考えれば考えるほど、セックスとは冷静な精神状態ではできない行為であるように思えてくる。「クンニやフェラなんて頭に血でも上ってなきゃ、おかしくてできたもんじゃないでしょ」と、みうら。

宮藤・でも唯一、セックスが終わった後ってちょっと笑いません? ティッシュでいろんなとこ拭いたりして、お互い照れくさくて苦笑いするみたいな瞬間って必ずあるじゃないですか。

みうら・あれって要は、自分たちが直前までしてたことの滑稽さを噛み締める瞬間でしょ。

 確かに我々は、本心ではおかしさを感じているけれど、テンションを上げて興奮した状態を死守することで、おかしくないフリをしているのかもしれない。

■スマホは人を幸せにしているのか?

 買い換えたばかりのiPhoneで、“巨乳ボンデージ”を検索したところ詐欺サイトに当たってしまったというみうら。そこから話は「便利なエロは幸せか?」という疑問へと発展していく。

宮藤・最近どの製品も“便利イコール幸せ”みたいな打ち出し方をしてくるけど、それはちょっと違う気がしますよね。便利さと引き換えに失ってるものがあるはずで。少なくともスマホによって、それこそ本屋にいったり、足で稼ぐみたいなことをする機会は減ってますから。

みうら・昔の刑事みたいなさ、靴底スリ減らして捜査するなんてことはなくなったよね。わざわざ神田のエロ本屋巡って、吟味に吟味を重ねベストエロをチョイスするって努力を一瞬でも怠り、ついつい便利エロに走っちゃった自分を恥じるね(笑)。小学生でもこの便利を使えばエロを簡単に手に入れられちゃうってことだもんね。

 確かに、どこかで“巨乳ボンデージ”という言葉を聞いた小学生が、「巨乳ボンデージって何だろう」と妄想を膨らますこともなくすぐにネット検索し、巨乳ボンデージの極致に一瞬で到達してしまうというのは、なんだか味気ないようにも感じる。

 本書には他にも、セックスは女の人を何回イカせたら許してもらえるのか? なぜ日本にはセックスレスカップルが多いのか? などセックスに纏わるふとした疑問から、なぜ戦争はなくならないのか? 遺言にはどんな言葉を残したらいいのか? といったものまで、エロを中心にしながら“生きるということ”が語られている。生命活動の根底にある“エロ”の曖昧な点を追求するという行為は実におもしろく、奥深い。

文=K(稲)