コロナ禍の現状を俯瞰してみる一助に。感染症拡大やパンデミックを描く作品6選

文芸・カルチャー

2020/4/19

 先の見えないコロナ禍の中にある今。感染症拡大やパンデミックを描いたフィクション作品に注目が集まっている。「今と重なってつらすぎる」という感想も多いだろう。けれど、作品を読んで、改めて自分の立場でできることや、感染拡大に努めるべき理由を実感した、という人も少なくない。

 さまざまな報道や外出自粛が叫ばれる現状を、少し俯瞰してみる一助になるような6作品を紹介したい。

ついに100万部に到達! 伝染病の脅威を描いた名作・カミュ『ペスト』

『ペスト』(カミュ:著、宮崎嶺雄:訳/新潮社)

 フランスのノーベル文学賞作家、アルベール・カミュが1947年に発表した長編小説『ペスト』(カミュ:著、宮崎嶺雄:訳/新潮社)。作中では1940年代のアルジェリア・オラン市で、高い致死率を持つ伝染病・ペストが発生。封鎖された街の中で、市民たちは愛する人との別れや孤立と向き合いながら“見えない敵”と戦っていく。

 新潮文庫版の累計発行部数はついに100万部を超え、感染が広がるイタリアやフランス、イギリスでもベストセラーとなっているという本作。登場人物の言葉「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。……つまり自分の職務を果すことだと心得ています」は、今のわたしたちに多くの示唆を与えてくれる。

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感染症による混乱がまるでデジャヴ!? イタリアの名作『いいなづけ』

『いいなづけ』上(A・マンゾーニ:著、平川祐弘:訳/河出書房新社)

 19世紀イタリアの国民的作家、アレッサンドロ・マンゾーニが1827年に発表した長編小説『いいなづけ』(A・マンゾーニ:著、平川祐弘:訳/河出書房新社)。物語はレンツォという若者が、許嫁のルチーアと結婚式を挙げようとするところからスタート。ルチーアに横恋慕した領主によって結婚式を妨害された2人は村を脱出し、苦難に満ちた逃避行を繰り広げていく。作中ではミラノにペストが蔓延し、恐怖や狂気によって激しい混乱が生じる様が映し出されている。

 今年2月、イタリア・ミラノにある高校のドメニコ・スキラーチェ校長が発表したメッセージによって、改めて世界中で注目を浴びることとなった本作。校長は学校のウェブサイトで、『いいなづけ』が伝染病に対するヒステリックな反応やデマ、外国人への恐怖心などを克明に描いていたと指摘。現実でも同じ混乱が生じていると語り、合理的な考え方によって行動することを推奨している。

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東京封鎖、学校一斉休校、海外渡航者隔離…10年前に刊行されていたウイルスの脅威を描いた小説『首都感染』

『首都感染』(高嶋哲夫/講談社)

 高嶋哲夫氏による小説『首都感染』(講談社)は、10年前に刊行されていたフィクションだが、今の現実と恐ろしいくらい酷似していると話題になっている。

 物語の舞台は、20XX年。中国でサッカー・ワールドカップの開催中、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率60%の強毒性の新型インフルエンザウイルスが出現。中国当局は、ウイルスを封じ込め、これを隠蔽しようとするが、失敗。世界中から集まったサポーターたちが帰国することで、恐怖のウイルスは世界各国へと広がってしまった。

 小説では、日本は、いちはやく大胆な対策を行うことで、被害を最小限に留めたが、今の日本の対応は…。思わず小説の中の登場人物の勇猛果敢な姿と比べてしまう人もいるだろう。

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細菌兵器で世界がパニックに…。パンデミックの恐怖を描く『復活の日』

『復活の日(角川文庫) 』(小松左京/KADOKAWA)

 小松左京氏が1964年に書き下ろしたSF小説『復活の日』(KADOKAWA)は、細菌兵器によって壊滅状態になった人間社会を描く。

 イギリス陸軍細菌戦研究所で試験中だった細菌兵器「MM-88」が職業スパイに持ち出されたことで、わずか半年で脊椎動物はほぼ絶滅。唯一生き残った、南極大陸に滞在していた各国の観測隊員1万人と原子力潜水艦の乗組員たちが、国家の壁を越え力を合わせ食料や子孫の問題などを乗り越え、世界が再び復活する日を願うも、ホワイトハウスに設けられた「自動報復装置(ARS)」が地震を敵国からの核攻撃と誤認すると、南極へも危機が迫ることが判明。生き残った人々は2度目の人類滅亡の危機に立ち向かうのだが――。

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奈良時代に流行した疫病を通じて、不安と恐怖、人間の本質を描いた直木賞候補作『火定』

『火定』(澤田瞳子/PHP研究所)

 2017年下半期の直木賞候補作となった、澤田瞳子氏の『火定』(PHP研究所)は、奈良時代に新羅から持ち込まれた疫病――天然痘が流行し、都中がパニックになるなか奮闘する医師たちの物語だ。

 治療法が見つからないまま人との接触を避けるしかない恐怖と不安。いかさまの神をでっちあげ、病に効くというふれこみで札を高額で売りつける男の扇動。藁にもすがる思いで札を信じ、命を救えない施薬院を糾弾して娘を連れ帰ってしまう親の情。新羅からの使いが持ち込んだ病と知れて、怒りと不安のやりばを失った民が、異国の民を排除しようと起こす暴動。保身ばかりに走って、施薬院にも手を差し伸べようとしない官たちの無責任。そのどれもが今の私たちにとって、他人事ではない。

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感染症拡大を描く医療サスペンスマンガ『リウーを待ちながら』

『リウーを待ちながら』(朱戸アオ/講談社)

 山下智久さん主演でテレビドラマ化もされた『インハンド』の著者でもある朱戸アオ氏によるマンガ『リウーを待ちながら』(講談社)は、「悪魔の細菌」に脅かされた架空の都市・横走市を舞台に医師と周りの人たちの奮闘を描く医療サスペンスだ。

 横走中央病院に、ボウズ頭の自衛隊員が運び込まれる。症状は、原因不明の吐血・昏倒。その後も次々と似た症状の患者が運び込まれるが、不可解な出来事が起こる。最初に倒れたボウズ頭の青年が、主治医の了承なく自衛隊病院に転院したのだ。承諾した院長は取り付く島もなく、自衛隊病院に連絡しても、青年の容態は教えてくれない…。この時すでに、自衛隊内部で「感染」が広がっていた――。

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