文芸評論家・三宅香帆氏「裏も表も強さも弱さも、全部その人の魅力だと教えてくれる」。はやみねかおる作品の魅力は「ワルさ」も持ち合わせたキャラクターたち《インタビュー》

文芸・カルチャー

PR 更新日:2025/1/30

 2024年4月に上梓した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)が「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞し、販売数20万部を超えるベストセラーとなっている、作家の三宅香帆さん。三宅さんも、児童文学作家・はやみねかおるさんの作品をこよなく愛する読者のひとりだという。

 幼いころから「本好き」を自認していた三宅さんに、「はやみねかおる作品」との出会いから、多くの読者を虜にする魅力について、大いに語っていただきました。

三宅香帆さん

――はやみねかおる作品との出会いを教えてください。

advertisement

三宅香帆さん(以下、三宅) 当時買っていた少女マンガ雑誌『なかよし』の別冊付録に、『名探偵夢水清志郎事件ノート』のコミカライズ(えぬえけい:漫画)が掲載されていたんですよ。それまでの私は、ミステリーというジャンルに興味をもてず、本好きとして江戸川乱歩シリーズはたしなみかと思っていちおう読んではみたもののピンとこなかった。でも、そのマンガに登場する「名探偵」も「事件」も、私がそれまでに触れてきたミステリーとは全然違うおもしろさがありました。

『名探偵夢水清志郎事件ノート』はやみねかおる:原作、えぬえけい:漫画/講談社)

――どんなところが、違ったんでしょう。

三宅 遊び心がある、ところでしょうか。それから小説の『そして五人がいなくなる 夢水清志郎事件ノート①』からシリーズを順に追い始めたんですけど、今度は、それまで読んできたどの児童文学とも違うと感じました。「ズッコケ三人組」シリーズ(那須正幹/ポプラ社)や「とんでる学園」シリーズ(ポプラ社)などが好きだったのですが、前者はやんちゃな男の子たち、後者はいい子の女の子というように、児童文学の主人公にはそれなりの型があったと思うんです。でも、夢水清志郎シリーズには、それがなかった。

『そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート』はやみねかおる:著、村田四郎:イラスト/講談社)

――主人公の亜衣も、「いい子」ではないですもんね。

三宅 そうなんですよ。もちろん、悪い子ではないんですよ。なんだかんだ真面目だし、一生懸命だし、優しいし。でも、児童文学でよく描かれてきた「まじめで内気な女の子」とは違っていた。たぶん、本好きの女の子に照準を合わせた結果、そういう型が生まれたんだと思いますが、本を読むからってみんながみんな、いい子なわけじゃないじゃないですか。

――むしろ偏屈だったりひねくれてたりしますよね。というのは我が身をふりかえっての話ですが(笑)。

三宅 亜衣ちゃんも本を読むのが好きで、小説も書いている文化系の女の子なんだけど、中学生ということもあって、自分でモノを考えて行動しようとする自立心があるし、教授(夢水清志郎)や大人たちと駆け引きするために知恵を働かせる「ワルさ」もある。教授はまあ、かなりヘンテコな人ですけど(笑)、たったひとり、変わったキャラクターがいるというのではなく、一人ひとりに個性が強かったのも魅力だなと思います。たぶん、キャラクターで小説を読む、という体験を生まれて初めて味わったのが「夢水清志郎事件ノート」シリーズでした。

あわせて読みたい