文芸評論家・三宅香帆氏「裏も表も強さも弱さも、全部その人の魅力だと教えてくれる」。はやみねかおる作品の魅力は「ワルさ」も持ち合わせたキャラクターたち《インタビュー》

文芸・カルチャー

PR 更新日:2025/1/30

――ほかに、印象に残っている作品はありますか?

三宅 夢水清志郎事件ノートの最終巻『卒業~開かずの教室を開けるとき~ 名探偵夢水清志郎事件ノート⑫』は、ちょうど中学の卒業式の日に買ったんです。たまたま書店に寄ったら平積みされていた、というのも運命的なものを感じました。『そして五人がいなくなる』が刊行された1994年は、私が生まれた年でもありますし。

『卒業~開かずの教室を開けるとき~ 名探偵夢水清志郎事件ノート』はやみねかおる:著、村田四郎:イラスト/講談社)

――同級生なんですね!

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三宅 そうなんです。だから、同い年の亜衣ちゃんが今も、出版業界のどこかにいるんじゃないかと思ったりもします(笑)。シリーズと一緒に成長してきた私にとって、今改めて、はやみねさんが注目され始めているのがとても嬉しいですし、大人になってすべての作品を追いきれなくなったからこそ、「はやみねかおる公式ファンクラブ 赤い夢学園」のサイトで「作品リスト」をつくってくださっているのも、ありがたいんですよ。

――刊行点数が多いから、久しぶりに読んでみたいけど何がいいのかなって迷っている人は多そうですよね。

三宅 今って、そういうシンプルなデータにアクセスするのが、意外と難しくなっているので……。あと個人的には、はやみねさんのファンブックが出た当時、書斎の様子が知れるだけでも嬉しかったのを覚えています。壁一面の本棚を見ながら、やっぱり何かを書こうと思うならこれくらい読んで、学んで、考え続けなくちゃいけないんだなってことを、はやみねさんから受け取った気がしますし、ファンクラブでも、そういうプライベートの一面を垣間見ることができたらとても嬉しいですね。影響を受けた小説、とかでいいから知りたい(笑)。だから、はやみねさんが登場してくださるオンラインのイベントは、ぜひ参加してみたいです。

――最後に、大人の読者にも愛され続けるはやみね作品の魅力はどこにあるのか、三宅さんのお考えをお聞かせください。

三宅 先ほどの「不完全」ともつながるのですが、カッコつけないところが素敵だなと思うんですよね。『僕と先輩のマジカル・ライフ』という、大学生の青春を描いた小説も大好きなのですが、ふつうは弱さやコンプレックスに思いがちなところが、全部キャラクターのチャーミングな魅力として描き出されている。世間的な価値観に心が寄って人をジャッジしてしまいそうになる瞬間は誰しもあると思いますが、裏も表も、強さも弱さも、全部ひっくるめてその人の魅力なんだってことを、はやみねさんは教えてくれる。どんな自分でも楽しく生きていくために必要な豊かな視野を与えてくれる小説だなと、読み返して改めて感じました。書き手としても、そのまなざしは忘れないようにしたいと思っています。

取材・文=立花もも

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