又吉直樹×ヨシタケシンスケ 共著で「創作方法の違い」に気づき 「コントづくりの経験が影響しているかも(又吉)」大ヒット作待望の第2弾『本でした』《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/8/10

 お笑い芸人で作家の又吉直樹さんと絵本作家のヨシタケシンスケさんが、本にまつわる物語を交互に紡いだ共著『その本は』(ポプラ社)。ふたりの本への愛と読書の楽しさに満ちた同作は、幅広い世代の心に響いた。

 このたび、そんなふたりのタッグが再び実現。最新作『本でした』(同)は、互いに出し合った本にまつわるお題をもとに、ふたりが21の物語を創作した。読者を心躍る本の旅へと導いてくれる本書は、どのように生まれたのだろうか。又吉さんとヨシタケさんに、本書を作る過程や、本や創作に対する思いを聞いた。

タイトルや書き出しを選ぶか最後の一文を選ぶかには創作のスタイルが影響

――お互いのお題に応える形で物語を書いていくというスタイルは、どのように決まったんですか?

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ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ) 前作『その本は』は、本そのものの価値を伝えたいというところからスタートして、今回もそれは同じなのですが、第2弾は前回とは違う体裁でやったほうが面白いだろうということで、切り口を変えました。まずはふたりで、「このタイトルだったらどんな本だと思う?」とか「こういう始まり方だったらどういう本になる?」とか、物語につながるキーワードを出し合うところから始めましたね。

又吉直樹さん(以下、又吉) 次に会う時までの宿題という感じで、まずはお題を持ち寄ることになりました。

ヨシタケ その相手が出したお題の中から好きなものを選んでお話を作りましょうという形で、第1弾、第2弾と進めていったんですけど……又吉さんのお題の量が、毎回びっくりするぐらい多くて、すごく焦りましたね(笑)。巻末に、物語にならなかったお題も掲載しているんですけど、又吉さんの考えたお題のほうが断然多い。それがこの本の見どころです(笑)。

――自分の出したお題に対して返って来た物語は、どのような気持ちで受け取りましたか?

又吉 やっぱりヨシタケさんと僕は作風も違うし、想定外の物語が返ってくるのが面白かったですね。

ヨシタケ お題の選び方の違いも面白かったです。お題はざっくり分けると「タイトル」「書き出し」「最後の一文」「その他」の4つだったんですけど、わりと又吉さんはタイトルや書き出しを選んでいて、僕は最後の一文をたくさん選んでいて。それは、それぞれの普段の物語の作り方に関わっているのかなと思うんです。僕は、タイトルや書き出しからだと、物語を転がしようがないんですよ。でも、最後の一文が決まっていると、この終わりに向けて、何がどうすればこうなるかな? って考えやすくて。

又吉 僕は、終わりが決まってるのが一番、難しいですね。物語を考える人を平均すると、終わりが決まっていると書きにくい人のほうが多い気がします。 統計とってないんでわからないですけど(笑)。

ヨシタケ どうでしょうね(笑)。僕はもともとイラストレーターだったから、お題に答えることが多かったんです。結果から巻き戻して物語を作るっていう頭の使い方をする仕事が多かったから、終わりが決まっていて、そこにどう持っていくかを考えていくのは楽しかったですね。それに、最初が決まっていて物語を広げていくと、何をやっても竜頭蛇尾になりそうで怖かった(笑)。又吉さんの最後の一文が面白かったので、僕が何を考えても、最後が面白くなるんだったら安全だな、と思いました。

又吉 今のヨシタケさんのお話を聞いて、もしかしたら、と思ったのは――僕は反対に、お題に対して即興で漫才をやるとか、1週間後のライブまでにこのテーマのコントを作らなきゃいけない、という経験が多くて。たとえば、明後日のライブまでに新ネタを下ろさないといけないという時に、相方が「家にこんな変な形のヘルメットがあった」っていう写真だけを送ってきて、そのヘルメットから物語を考えたり(笑)。ヨシタケさんが作ってくれた書き出しやタイトルはまさに設定だから、確かに、これまでの頭の使い方がお題選びに影響してるのかもしれないですね。

――まずは設定や道具が先にあって、そこから展開させていく、というアプローチなわけですね。

又吉 でも、ヨシタケさんがおっしゃる通り、設定が面白いと尻すぼみになるケースが多いです(笑)。そういう時の作戦としては、短めに終わらすか、途中でむちゃくちゃテンションを上げるか。途中で一回でっかい声を出すみたいな展開を作ると、なんとなく4、5分は持つ体感はあるんで(笑)。物語でも必ず、設定がおもろかったら、それと等価ぐらいの展開を途中で入れなあかんっていう感覚はありますね。

ヨシタケ 勉強になるなぁ……。

又吉 いやいや(笑)。

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