敵を誘惑して寝首を掻っ切る美人。洋服が血で汚れるのを嫌がるような表情に笑ってしまう/つい人に話したくなる名画の雑学③
公開日:2023/12/16

涙が物語るは本当に怒りか――
『堕天使』
アレクサンドル・カバネル
【フランス 1823~1889年】
溢れる涙が物語る神への変わらぬ愛
瞳から溢れる血涙のようにも見える涙。きつく固められた両手からは、彼の怒りが伝わってきます。彼はルシファー。堕天使にして悪魔の王(サタン)です。
かつて神に最も愛された彼は、天使の長として君臨していましたが、神への反乱を企てたとして地に墜とされました。恐らく彼は神への復讐を誓ったでしょうが、気になるのはこの涙です。ただ怒りに燃える者が、こんな悲しげな涙を流せるでしょうか。彼は恐らく誰より神を愛していたのではないか、そして地に墜とされた今でもまだ愛しているのではないか、とこの涙は思わせてくれます。
数多の弟子を抱える権威的画家カバネル
作品を描いたカバネルはアカデミック、いわゆる伝統的かつスタンダードな絵画を描いた人でした。ナポレオン3世のお気に入りで多くの弟子を抱えていたとか。革新的な印象派の対極にいるとも言える権威的な画家ですが、ルシファーの内面をここまで深くえぐった技量は流石です。
<第4回に続く>