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カインの末裔/クララの出家 (岩波文庫 緑 36-4)

カインの末裔/クララの出家 (岩波文庫 緑 36-4)

カインの末裔/クララの出家 (岩波文庫 緑 36-4)

作家
有島武郎
出版社
岩波書店
発売日
0000-00-00
ISBN
9784003103647
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カインの末裔/クララの出家 (岩波文庫 緑 36-4) / 感想・レビュー

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Willie the Wildcat

『カインの末裔』は、表題が暗喩するヒトが生まれ持つ悪徳と因果応報を問う。場主との対峙がもれなく転機、現実への目覚め。農場に来た当初の夢の再興を信じたいと思わせる最後の場面、旅立ち。表題ほど宗教色は強くない感。一方、『クララの出家』は宗教色を前面に出し、揺れ動く主人公の心情を描写。夢と現実を、来世と現世にそれぞれ置き換えてみた。最後の最後にすすり泣くクララ。それがヒトであり、宗教を求める理由付けなのかもしれない。両作品の共通項がこの心情の揺れであり、ヒトたる所以。過程の違いも同様ではなかろうか。

2019/04/24

みっぴー

途中で挫折したスタインベックの『怒りの葡萄』を思い出しました。無慈悲な大自然により職も住居も奪われ、大地を放浪する一組の夫婦。運が悪いのか神の怒りを買ったのか、とにかく不運から逃れることが出来ない。信仰心篤い人なら試練と思って乗り越えられるのか、それとも信仰を失うのか…もう一作のクララの出家は、俗世を捨てて尼になることへの葛藤と希望を描いた作品。ジットの『狭き門』と似たテーマです。『カインの末裔』とは真逆の世界観で、幻想的な雰囲気。どうせならこの世でもあの世でも楽しみたいと思う私は、根っからの俗物。

2017/02/04

テディ

①カインの末裔-世俗的な生き方をする粗暴で野性的な農民の仁右衛門。暴力的で妻さえも粗雑に扱う。不条理な小作制度、極寒の北海道での自然の脅威、馬の不慮の事故。赤ん坊、馬、土地を失い新たな生き方を模索する。②クララの出家-自分の生活に不思議な違和感を持つ純粋な少女クララ。やがて放蕩生活から回心したフランシスと出会い彼の生活と教えに答えを見出し肉欲を克服し出家へ向かう。外で生きる猛々しい世界を描いた①と純粋な女性の心の中を書いた②は対照的であるがいずれも人間の深いエゴについての絶望を見出している印象を受けた。

2016/03/21

Miyoshi Hirotaka

瀟洒な別荘や三ツ星のオルベージュがある羊蹄山麓も百年前は荒々しい大地。そこの農場に新参の小作人として入植した仁左衛門が「カインの末裔」に相応しい荒ぶる性格を発揮し、過酷な運命に見舞われる。暴力、姦通、酒、賭博。秩序を破壊する一方で赤痢で子供が死んだり、持馬が骨折したりという不幸や不運に襲われる。それはあたかも自然の猛威が人間を通してそのまま周囲に拡散するようだ。真、善、美は一つもない。私からたった三世代前の北海道はこんなにも荒々しく、貧しかった。私もまた「カインの末裔」、心の中にの悪の血を受けついでいる。

2014/11/20

両作共にとてもよかった。「カインの末裔」落ちてきそうな曇天の空を、刺すような風の冷たさを、ありありと感じた。この地や場主など、抗うことすら許されぬ絶対的な強者の前に立つ、小さく無力な自分。小さな村の中では、その暴力性によって人々の口を噤ませてきた「強者」たる彼も、所詮は小さな世界に君臨する暴虐者でしかない。「クララの出家」しんとした厳かな決意を現実へ進行させてゆく少女。冒頭から一気に引き込まれた。クララという人間が凝縮されここに紹介されている。宗教画の如き処女の描写はその後の展開を暗示する。

2017/12/05

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