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アスパンの恋文 (岩波文庫)

アスパンの恋文 (岩波文庫)

アスパンの恋文 (岩波文庫)

作家
ヘンリー・ジェイムズ
行方 昭夫
出版社
岩波書店
発売日
1998-05-18
ISBN
9784003231388
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アスパンの恋文 (岩波文庫) / 感想・レビュー

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星落秋風五丈原

現実離れしているはずのミス・ボルドローは、姪が言うところの年齢が正しいなら150歳(えええ?)。人生経験が豊富なのか、家賃交渉もゴンドラレンタル交渉も強気で押してくる。こんなはずではなかったと思いながら、わたしは滞在中に金は取られ、肝心の手紙の存在を匂わせてもはぐらかされ、彼女の姪のミス・ティータとデートもどきを強いられる。さあ、わたしは手紙を手に入れられるのか?三者三様の思惑が古都ヴェニスで絡むコメディ。歴史のないアメリカ人が歴史のあるヨーロッパへ行って金で買い漁るのはヘンリー・ジェイムズ定番。

2021/03/25

みつ

詩人アスパンの研究者である語り手は彼が宛てた恋文を手に入れようと、その持ち主を探して説得に尽くす・・筋はと言えばこれだけであり、登場人物も基本的にはこの二人と姪の3人だけ。恋文を探していることを悟らせないように苦心する「わたし」と、姪に遺産を残したいため思いがけぬ下宿の申し出を最大限利用しようとするする老婦人のかけひきだけで物語は進む。確かモームはジェイムズについて「ページ・ターナー」の書き手である旨『読書案内』(昔岩波新書にあった)に書いていた記憶が。諸作からは俄には信じ難いが、これなどはその典型例か。

2023/06/24

syaori

米国の大詩人ジェフリー・アスパン、彼の詩に歌われたことのある婦人が生きていて、しかも彼からの恋文を持っているかもしれない。アスパンの研究者である「わたし」はアスパンの恋文を求め、老婦人が姪と二人きりで住む古い屋敷に住み込みます。老嬢は本当に詩人の恋文を持っているのか、他人の人生を詮索する物書きを信用していない老嬢、善良な老嬢の姪、ヴェネツィアの大きな屋敷を舞台に各人の思惑が絡み合い、ミステリーのようで一気に最後までたどり着きました。ロマンチックな題材なのに皮肉で「やりきれぬ思い」のする結末にニヤニヤ。

2016/12/14

ぺったらぺたら子 

ジェイムズとは優しいサディストなのではないか。その矛盾がこの様に我々の体をキリキリと捻転させるのではないのか。読み出したら止まらぬ面白さだが本当は難しい小説。私はたまたま先に後期作を読んだので安定感を持って読みましたが。初期にこれ程完成されたものを作ってしまえばその先はあんな事になるしかないのか、人気作家にもなれたのに。と思いつつ、しかも初期の作ながらジェイムズ・ワールド全体を示すかのように、「ワシントン・スクエア」から「大使たち」も「鳩の翼」も「金色の盃」も見事にこの中に映って見えるという水晶球。絶品。

2018/07/25

藤月はな(灯れ松明の火)

手紙を巡る心理戦でもあるミステリー的物語。お金を使ってオールドミスの姪にも近づいて手紙の獲得のために外堀を埋めていく主人公に待ち受けるのは・・・・。主人公が人の「恋」という最も心の機微が要されることと自分の本音に疎かったならばあのような結末にはならなかったのだろうかと考えてしまいます。

2012/06/27

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