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アメリカと戦いながら日本映画を観た (朝日文庫)

アメリカと戦いながら日本映画を観た (朝日文庫)

アメリカと戦いながら日本映画を観た (朝日文庫)

作家
小林信彦
出版社
朝日新聞出版
発売日
2019-07-05
ISBN
9784022619785
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アメリカと戦いながら日本映画を観た (朝日文庫) / 感想・レビュー

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もりくに

東京の下町の和菓子屋の息子である小林少年の、「映画」を通じた太平洋戦争と戦時下の生活の実感記。解説の柴山幹郎さんの、矛盾や齟齬や葛藤などがまるごと重層的に収められていて、「面白くて苦い本」という評が、至言。エッセイ「本音を申せば」などから推察されるリベラリストの小林さんが、後知恵で修正せず、当時の実感を綴っている。彼が1932年に生まれた時、「すでに」戦争は始まっていて、家が焼かれて「敗戦」した時は、中学1年だった。ずっと戦争の中で成長した少年で、そんな中、小学校に入る頃からずっと「映画」を観てきた。→

2019/09/07

ヨーイチ

1995発表。初の文庫化らしい。お盆休みに相応しい文庫化で此方もそれに乗っかっている。自伝の「和菓子屋の息子」を補完する物とのこと。「アメリカと戦う」ようになりアメリカ映画が禁輸となった時から戦後に疎開先から帰還を果たす数年間を「小林少年」の視線、印象を大切にして綴られた社会史。「強烈な社会の縛り」の中で奮闘した映画人が垣間見える。阪妻主演「無法松の一生」に纏わるエピソードとその後は検閲の実際を鮮やかに照射している。映画と歴史と回想のバランスが良い。信頼の置ける叙述がテンポ良く続く感じで好著。

2019/08/19

Inzaghico

小林少年は、戦況が悪化していくなかでも、日本映画を観て自分なりに楽しみを見出してきたが、疎開させられるに至って、初めて戦争によって「自分を拘束」された。自由を奪われることが、何よりも辛いのだ。人間不信に陥り、ひいては自分すらも信じられなくなった。このときの経験から、右左問わず、徒党が嫌いになったという。敗戦後は、再びアメリカ映画三昧の日々を送る。 こういう戦争の語り口もある。きちんと記録をとっていた小林ならではの作品だ。

2019/07/26

Gen Kato

新作かと喜んで手に取ったら『一少年の観た〈聖戦〉』の改題復刊だった。よって再読。読み進むうち、今、この本を改めて世に出した意味がじわじわとわかって来る。「〈聖戦〉にもっとも貢献した新聞」が戦後いかに「変身」したか。「権力の側に立って弱者を誹謗する――それが〈聖戦〉のカルチャー・ヒーローの実態であった」と苦々しく結ばれる章のタイトルは「少年たちにとっての戦犯」。ここで批判されているのはひとりの漫画家だが、メディアも「戦犯」であることは明らか。版元も版元だし、いろいろ考えさせられました。

2019/09/13

カノープス

映画について綴り続けてきた著者が試みる【戦争と映画】。あの時を生き、生き抜いた者にしか書けない。しかも国策映画と絡めた時代への考察など小林にしか出来ない。ここに本書の独自性がある。リアルタイムに監督デビュー作を観た黒澤明がいかに異能であるかの興味深い分析。これは戦時中の作品も令和の新作も並列に観ることができる現在で、なかなか見えにくい巨匠のすごさである。美化や誇張を排した東京に住む映画好きな一少年のリアルな戦争への想い。これが徹底されているので非常に貴重な証言として読める。

2024/02/23

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