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中尉 (角川文庫)

中尉 (角川文庫)

中尉 (角川文庫)

作家
古処誠二
出版社
KADOKAWA
発売日
2017-07-25
ISBN
9784041058633
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中尉 (角川文庫) / 感想・レビュー

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ケンイチミズバ

戦争を知らずにぼくらは育った。言い訳なのかと解釈しながら歌ったフォーク。日本の敗色で再び民族独立の気運が高まるビルマにとって日本兵の力、特に将校のそれが必要とされた背景も大きい。反英ゲリラに拐われた軍医の行方、収容所に出没するリクルーター、参加を求める日本語の書面、軍医中慰の本心は薮の中。現地に残りビルマやインドシナの解放戦線に参加した日本兵の気持ちを知りたくなった。マラリアによるシニ温度を経てそれ以前と以後でまるで別人のように人物評価が別れる軍医中慰。死線から生還し人が変わってしまう例はいくつもある。

2017/08/14

ふじさん

昼行燈めいた軍医中尉の指揮下、ビルマでペスト封じ込めに当たった下士官が何を体験したか、頑固で実直なその視点を通し綴る戦争小説。著者の作品は常にそうだが、戦争について書く事は要するに人の心について書く事なのだと、明瞭な自覚を伴った筆が非常に読ませる。若い世代が何故戦争を活写出来るのか不思議がる言説も多く見るが、これも恐らく著者が普遍/不変の心理について書いているから、なのだろう。外からは窺い知れない他者の頭の中にある真実へ寄り添う為、ミステリ的手法でリドルストーリーに仕立てた企図も堂に入った物で唸らされた。

2022/01/22

浅木原

再読。戦後の後知恵を徹底して排除し、当時の視点を考えて個人へとフォーカスする第三期古処作品は、終戦を何ひとつ盛り上がりのない事象として描き、〝東亜の解放。/実直な者をより実直にする理念である。日本が負けたところで否定する気になれない者が大半だろう。〟(P151)というような文章を語り手の自然な思考としてさらっと書いてみせる。いつもの対比構造も逆説的なアフォリズムもほぼ完全に封印されている様は、『ニンジアンエ』→『死んでも負けない』という流れを踏まえて読むと強い意志をもってそう書かれてるなあと実感。

2017/09/10

YH

戦争が題材だけど、終戦間際から戦後間もないビルマが舞台で、悲惨を通り越してしまったからか淡々と物語は流れた。日本とイギリスの狭間で自国の意思ではなく、巻き込まれた感の強いビルマの人々の心境はきっとこの話と近しいのだろう。伊予田中尉はきっと殺されていないだろうが、補給係の予想通りなら切ない。

2018/05/27

じーにあす

舞台は太平洋戦争敗戦間近のビルマ。軍医である伊与田中尉と、その護衛を任されたわたし、尾能軍曹の物語。その中尉がビルマの武装強盗団にさらわれる所から話は始まる。誰に、何のためにさらわれたのか?を軸に話は淡々と綴られていく。敗戦間近の時代背景はリアルで、その頃の日本兵の心理も巧みに描写されていると感じました。ストーリーに大きな波は無いものの、最後までどうなるか分からず一気読み。読みごたえがありました。

2018/02/14

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